「定年後は、これまでの経験を社会のために活かしたい。」
そう考えてNPOへの就職を検討し始めた方は、近年確実に増えています。
NPOで働くことは、やりがいと社会貢献を同時に得られる魅力的なセカンドキャリアの選択肢です。
しかし、民間企業とは異なる組織文化や給与水準、採用基準など、事前に知っておくべき現実もあります。
この記事では、NPOへの就職を真剣に考えている50〜60代の方に向けて、求人の探し方から面接対策・入職後の心構えまで、実践的な情報を丁寧にお伝えします。
「やりがいだけで選んで後悔した」とならないために、ぜひ最後まで読んでみてください。
NPOで「働く」とはどういうことか?ボランティアとの違いを整理する
有給スタッフとボランティアの違い
NPOで「働く」と聞いたとき、「ボランティアとどう違うのか」と疑問を持つ方は多いでしょう。
端的に言えば、ボランティアは個人が自発的・無償で行う活動であるのに対し、有給スタッフはNPOと雇用契約を結び、給与を受け取りながら組織の事業を担う存在です。
NPOは「非営利」という言葉のイメージから全員がボランティアだと思われがちですが、非営利とは「利益を構成員に分配しない」という意味であり、スタッフへの給与支払いは一般企業と同様に行われます。
有給スタッフには社会保険への加入義務もあり、労働基準法に基づいた雇用関係が成立するため、働く環境として十分に成立しています。
NPOの組織構造と自分が入れるポジション
NPOの組織は大きく「役員」と「職員」に分かれています。
役員には理事と監事があり、法人の意思決定や監査を担いますが、役員報酬を支給するNPO法人は現実にはごく少数で、ほとんどのNPO法人の役員は無報酬でやっているのが現状です。
定年後に「有給で働きたい」という方が目指すべきポジションは、日々の実務を担う「職員(スタッフ)」です。
職員の就業形態はさまざまで、正規職員として勤務する人のほか、特定の企画を専門とするフリーランスの人もいます。
また、小規模なNPOでは一人が幅広い業務を担当することも多く、事務・広報・企画・ボランティアの取りまとめまでこなす「マルチプレーヤー」としての役割が求められる場合もあります。
定年後にNPOで働くことの魅力とリアルな課題
スキルと経験が直接社会に届く充実感
民間企業での仕事は、売上や利益という数字を通じて社会に貢献する形が一般的です。
一方、NPOでの仕事は支援を受けた人の笑顔や感謝の言葉など、自分の働きが社会に届いていることを肌で感じられる場面が多いという特徴があります。
長年培ってきた営業・経理・広報・ITなどの専門スキルが、資金難や人手不足に悩むNPOにとって即戦力として歓迎されることも少なくありません。
「自分の経験が、こんなところで役立つとは思わなかった」という声は、NPOに転じた定年後のスタッフから頻繁に聞かれる言葉です。
社会への貢献を直接実感しながら働けることが、NPO就職の最大の魅力といえるでしょう。
給与・待遇の現実を正直に知っておく
NPOへの就職を検討する上で、給与の現実を事前に把握しておくことはとても重要です。
内閣府の「特定非営利活動法人に関する実態調査」によると、NPO法人の正規職員の平均年収はおおむね200〜300万円程度が中心的なゾーンであり、民間企業の平均と比べると低い水準にあるのが現状です。
ただし、これはすべてのNPOに当てはまるわけではありません。 事業規模の大きな認定NPO法人や、マーケティング・IT・経理などの専門職ポジションでは年収400万円以上の求人も存在しており、近年は給与水準の向上を目指す団体も着実に増えています。
定年後の生活設計として年金との組み合わせを前提にすれば、現実的な選択肢として十分に成立する場合も多いでしょう。
入職前に給与・社会保険・昇給の仕組みをしっかり確認しておくことが大切です。
民間企業との働き方の違いに慣れるまで
NPOに入職して最初に戸惑う方が多いのが、意思決定のスピードや業務の進め方が民間企業とは大きく異なる点です。
NPOは少人数で運営されていることが多く、マニュアルや業務フローが整備されていない団体も珍しくありません。
また、資金調達・イベント運営・広報・事務などを一人が兼務するケースも多く、「自分で考えて動く」ことが求められる場面が増えます。
民間企業の効率的な仕事の進め方を活かしつつも、NPO独自の文化やペースを尊重する柔軟な姿勢が、職場に早くなじむための鍵となります。
どんなスキルが求められるのか|採用されやすい人の特徴
NPOが特に必要としている職種・スキル
内閣府の調査によると、認定NPO法人の約70%が「人材の確保や教育」を最大の課題として挙げており、経験豊富なシニア人材への期待は高まっています。
特に需要が高い職種は、ファンドレイジング(資金調達)、広報・マーケティング、管理部門(経理・人事・総務)の3つです。
また、プロジェクトを予定通りに遂行するマネジメントスキルや、WordやExcel等の基本的なPCスキルも幅広く求められています。
会社員時代に営業・経理・広報・人事などを担当してきた方は、これらのスキルをそのままNPOで活かせる可能性が高く、即戦力として歓迎される場面が多いでしょう。
「即戦力」より「柔軟性」が重視される理由
スキルや経験が豊富であることは採用において大きな強みですが、NPOの採用担当者が実際に重視するのは「この人と一緒に働けるか」という人間的な柔軟性だという声が多く聞かれます。
民間企業での輝かしいキャリアを前面に出しすぎると、「組織のやり方に合わせてもらえないかもしれない」という懸念を持たれてしまうことがあります。 NPOは少人数で密接に連携しながら動く組織であるため、スキルの高さよりも「チームに溶け込めるか」「ミッションへの共感があるか」が採用の決め手になることが少なくありません。 応募の際は自分のスキルだけでなく、その団体の活動への共感や「一緒に学ぶ姿勢」を伝えることが、採用への近道となります。
NPOの求人を探す具体的な方法
NPO専門の求人サイトを活用する
NPOへの就職を目指す場合、まず活用したいのがNPO・ソーシャルセクター専門の求人サイトです。
代表的なものとして、社会課題の解決に特化した求人を掲載する「DRIVEキャリア」があり、福祉・環境・教育・国際協力など24の分野から自分に合った求人を探せます。
また、国内最大級のNPO・社会的企業の情報サイト「activo(アクティボ)」は職員求人とボランティア募集の両方を掲載しており、まず団体の雰囲気を知りたい方にも活用しやすい構成になっています。
さらに、企業でのスキルを社会に活かしたい方向けに特化した「FunDio」は、コンサルタント・営業・広報など職種別に求人を探せるため、自分のキャリアと照らし合わせながら活動先を選びやすい点が特徴です。
ハローワーク・中間支援組織を活用する
NPO専門サイト以外にも、活用できる窓口が複数あります。
まずハローワークでは、NPO・社会福祉法人などの求人も掲載されており、採用は不定期なため、ハローワークなどで探したり、希望する団体のホームページをこまめに確認したりすることが有効です。
もうひとつ活用したいのが「中間支援組織」と呼ばれる機関です。
中間支援組織とは、NPOと人材・資金・情報などをつなぐ役割を担う組織のことで、各都道府県のNPOサポートセンターがその代表例です。
就職希望者に対してNPOとのマッチング支援や相談対応を行っている機関もあるため、地域のNPOサポートセンターに相談してみることをおすすめします。
また、居住地域との関わりが強い団体であれば、知り合いの紹介で就職できる場合もあるため、就職を希望していることを周囲に伝えておくことも有効な手段のひとつです。
応募前に団体の活動内容を必ず確認すること
求人票に魅力を感じてもすぐに応募するのではなく、まず団体の活動内容をしっかり調べることが、入職後のミスマッチを防ぐ最も重要なステップです。 確認すべきポイントは、団体のホームページに掲載されている事業報告書・財務諸表・活動実績の3点です。 財務状況が安定しているか、事業規模は拡大傾向にあるかを確認することで、雇用の継続性をある程度見通すことができます。 また、可能であれば応募前に団体が主催するイベントや説明会に参加し、スタッフの雰囲気や組織の空気感を直接確かめておくことをおすすめします。
採用面接・入職後に気をつけること
面接で好印象を与えるための準備ポイント
NPOの採用面接は、基本的な流れは民間企業と大きく変わりません。
「これまでの経験」「貢献できるスキル」「志望動機」の3点を答えられるよう準備しておきましょう。
ただし、NPO特有のポイントとして、「なぜその団体のミッションに共感するのか」を自分の言葉で具体的に語れることが重視されます。
「社会貢献がしたい」という抽象的な動機よりも、「この団体が取り組む〇〇という課題に、自分が〇〇という経験を通じて深く関心を持った」という形で語れると、採用担当者に強い印象を残せます。
また、過去の肩書きや実績を誇示するのではなく、「チームに溶け込み、一緒に学ぶ姿勢がある」ことをさりげなく伝えることが、NPO面接では特に効果的です。
入職後に長く続けるための心構え
NPOに入職した後、最初の半年間が最も大切な時期です。
民間企業とは異なる組織文化やコミュニケーションのスタイルに戸惑うこともありますが、まずは「観察者」として場の空気をじっくり読むことをおすすめします。
「前の会社ではこうだった」という言葉は、たとえ善意であっても職場の雰囲気を硬直させてしまうことがあるため、改善提案は信頼関係が築かれてから行う方が賢明です。
一方、自分のスキルが求められる場面では積極的に貢献し、「この人がいてよかった」と感じてもらえる実績を少しずつ積み重ねていくことが、長く続けるための最も確実な道といえます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 定年後にNPOへ就職する場合、年齢制限はありますか?
多くのNPOでは年齢制限を設けておらず、60代・70代のスタッフが活躍している団体も珍しくありません。
ただし、求人票に「〇〇歳まで」という記載がある場合はその条件に従う必要があります。
年齢よりも「ミッションへの共感」と「継続して働ける意欲」が重視されることがほとんどです。
Q2. NPOへの就職は、年金受給に影響しますか?
NPOで有給スタッフとして働く場合、雇用形態や収入額によっては在職老齢年金の仕組みにより年金が一部支給停止になるケースがあります。
詳細は日本年金機構の公式サイトや最寄りの年金事務所で確認されることをおすすめします。
働き方を決める前に、収入と年金の兼ね合いを事前に把握しておくことが大切です。
Q3. NPOで働くにあたって、事前に取得しておくと有利な資格はありますか?
業務内容によって異なりますが、社会福祉士・ファイナンシャルプランナー・簿記などの資格は、福祉系・経営支援系のNPOで評価されることがあります。
ただし、資格よりも実務経験と人柄が重視される傾向が強いため、資格取得にこだわりすぎず、まず応募してみることをおすすめします。
Q4. 正規職員ではなく、パートタイムでNPOで働くことはできますか?
はい、可能です。
NPOの求人にはパートタイム・アルバイト・業務委託など多様な雇用形態が用意されている場合があります。
週2〜3日から始めて徐々に関わりを深めていくという働き方は、定年後の体力や生活ペースに合わせた現実的な選択肢のひとつです。
Q5. 入職後に「自分には合わない」と感じた場合はどうすればよいですか?
無理に続ける必要はありません。
ただし、退職の際は後任への引き継ぎや関係者への丁寧な挨拶など、誠実な対応を心がけることが大切です。
一つの団体が合わなかったからといってNPO全体を諦める必要はなく、別の団体や異なる活動分野に目を向けてみることで、自分に合った場所が見つかることも多いでしょう。
まとめ|セカンドキャリアとしてNPOを選ぶあなたへ
定年後にNPOで働くことは、これまでのスキルと経験を社会に還元しながら、自分らしい第二の人生を切り開く選択肢のひとつです。
給与水準や組織文化など、民間企業とは異なる現実もありますが、それを理解した上で飛び込む方にとっては、これ以上ないほど充実した働き場所になり得ます。
まずはNPO専門の求人サイトやハローワーク、地域の中間支援組織を活用して、気になる団体を探してみましょう。
応募前には団体の財務状況や活動実績を確認し、可能であれば説明会やイベントに足を運んで雰囲気を直接確かめることをおすすめします。
やりがいと収入を両立させたい」「自分の経験を誰かのために活かしたい」という思いをお持ちの方は、ぜひ今日から具体的な一歩を踏み出してみてください。
あなたのキャリアと情熱を必要としているNPOが、きっとどこかにあります。
