定年を迎えた後の毎日をどう過ごすか、漠然とした不安を感じている方は少なくありません。
仕事一筋だった方ほど、「退職したら何をすればいいのだろう」と戸惑いを覚えるものです。
しかし、定年後には1日8時間以上、年間にすると2,000時間以上もの自由な時間が生まれます。
この時間をどう使うかが、セカンドライフの充実度を大きく左右します。
本記事では最新の調査データをもとに、定年後の過ごし方の人気ランキングをご紹介しながら、充実した毎日を送るためのヒントをお届けします。
定年後の過ごし方ランキングTOP10
ソニー生命保険が全国50〜79歳のシニア1,000名を対象に実施した「シニアの生活意識調査2025」によると、現在の楽しみの第1位は「旅行」(男性44.2%・女性46.2%)、第2位は「テレビ/ドラマ」、男性3位は「スポーツ」、女性3位は「読書」という結果となりました。
また、FNNが50〜60代の男女200名を対象に実施した調査では、老後にやりたいことの第1位は「趣味・娯楽」(139人)、第2位は「運動・体づくり」(104人)、第3位は「生前整理・終活」(65人)となっています。
さらに、アクティブシニアの趣味・活動に関する調査(2025年)では、「自身が体を動かすスポーツ」が48.5%でトップ、次いで「旅行・観光」が43.3%、「文化活動」が41.0%という結果も出ており、心身の健康維持を重視する傾向が読み取れます。
これらの調査結果を総合すると、定年後の過ごし方として人気の高い選択肢は次のようにまとめられます。
| 順位 | 過ごし方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1位 | 旅行・観光 | 支持率45%超。国内外を自分のペースで楽しめる |
| 2位 | 趣味・娯楽全般 | 英語・投資・手芸など幅広い |
| 3位 | 運動・スポーツ | 健康維持と生きがいを両立 |
| 4位 | テレビ・映画・読書 | 自宅でできる手軽な楽しみ |
| 5位 | グルメ・食の楽しみ | 外食・料理教室など |
| 6位 | 地域活動・ワークショップ参加 | 新たな人間関係づくりにも |
| 7位 | 仕事・再雇用・副業 | 社会とのつながりを継続 |
| 8位 | 英語学習・資格取得 | 知的充実・生涯学習 |
| 9位 | ボランティア活動 | 社会貢献と生きがいを両立 |
| 10位 | 移住・田舎暮らし | 環境を変えた新生活 |
人気の背景には「人生100年時代」という現実があります。
60歳で定年を迎えても、その後20〜30年という長い時間が続く時代において、充実した過ごし方を選ぶことは、健康寿命を延ばすうえでも非常に重要な意味を持ちます。
第1位〜3位を徹底解説|なぜ定年後に人気なのか?
ランキング上位に挙がった「旅行・観光」「趣味・娯楽」「運動・スポーツ」の3つには、それぞれ定年後の生活にフィットする深い理由があります。
ここでは、各ジャンルの魅力と、具体的な始め方のヒントをご紹介します。
第1位:旅行・観光|時間の自由が旅の醍醐味を倍増させる
定年後に旅行が圧倒的な人気を誇る最大の理由は、「時間の自由」にあります。
現役時代はゴールデンウィークや年末年始などの混雑シーズンしか休暇が取れなかった方も、定年後は閑散期にのんびり旅程を組むことができます。
交通各社が提供する「シニア割引」を活用すれば、費用を抑えながらより快適な旅を楽しめるのも大きな魅力です。
旅行の種類も実に多様です。
国内の温泉地を巡る「湯治旅」は、心身のリフレッシュに最適で、長期滞在型のゆったりした旅も定年後ならではの楽しみ方です。
海外旅行であれば、フライト時間が短く食の充実した香港・台湾がシニアに特に人気で、体への負担が少ない点が支持される理由のひとつです。
また、地元の小さな美術館や郷土料理に触れる「マイクロツーリズム」も注目されており、近場でも十分に深みある旅体験ができます。
さらに、旅行には健康面のメリットもあります。
研究によると、旅行には認知症予防や健康寿命の延伸に役立つ効果があるとされており、楽しみながら心身を活性化できる過ごし方として高く評価されています。
第2位:趣味・娯楽|生きがいと充実感を同時に手に入れる
趣味を持つことは、定年後の生活満足度を高める最も効果的な方法のひとつです。
FNNの調査でも「老後にしたいこと第1位」として趣味・娯楽が挙げられており、多くのシニアが趣味に人生の充実を見出しています。
定年後に人気の趣味としては、ガーデニング・家庭菜園、絵画・イラスト、編み物・手芸などが挙げられます。
特にガーデニングは、土や植物に触れることで癒しと達成感を得られ、認知症予防にも効果があるとされています。
編み物は、毛糸と編み棒さえあれば低コストで始められ、手先を使うことで脳への良い刺激にもなります。
料理も、定年後の男性に急速に人気が高まっている趣味のひとつです。
自分が楽しむだけでなく、家族や友人に振る舞って喜ばれる体験が、新たな生きがいにつながると多くの方が語っています。
大切なのは「好きかどうか」を最優先にし、まずは気軽に試してみることです。
第3位:運動・スポーツ|健康寿命を延ばす最短ルート
アクティブシニアの趣味・活動調査(2025年)によると、「自身が体を動かすスポーツ」は48.5%でトップを占めており、健康維持への関心の高さが数字にも表れています。
なかでもウォーキングは、歩きやすい靴と動きやすい服があれば今日からでも始められる手軽さが最大の魅力です。
コースに景色の良い場所を選ぶだけで気分転換にもなり、継続のハードルが下がります。
水泳や太極拳、ヨガなど、関節への負担が少ない運動も60〜70代に広く支持されています。
運動習慣がある人は、そうでない人と比べて健康寿命が平均で数年長いという研究結果も報告されており、定年後こそ体を動かす習慣を作る絶好のタイミングといえます。
週に2〜3回、無理のない範囲で続けることが、長く楽しむための秘訣です。
定年後に仕事を続けるという選択肢
定年後の過ごし方として、「引き続き働く」という選択肢を選ぶ方は決して少数派ではありません。
FNNの調査では、定年後も働くシニアは約4割にのぼるという結果が出ており、セカンドライフにおける「仕事」の存在感は年々高まっています。
背景には、「生活費の確保」はもちろん、「社会とのつながりを保つため」「身体的・精神的健康を維持するため」という理由が4割ほどにのぼっていることがあります。
再雇用・継続雇用|最もポピュラーな選択肢
定年後に働き続ける方法として最も多いのが、元の勤め先での「継続雇用(再雇用)」です。
厚生労働省の調査によると、定年到達者のうち継続雇用を希望した方の大多数が、定年後も同じ会社で働き続けているというデータがあります。
2025年時点で、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は31.9%と3割を超えており、今後さらに環境が整備される見込みです。
継続雇用の最大のメリットは、慣れ親しんだ環境で無理なく働ける点です。
リクルートワークス研究所の調査によると、60代になると仕事の質や量の負荷が下がる傾向があり、定年前より精神的なストレスを感じにくくなる方が多いとされています。
「責任の重さが減り、むしろ仕事が楽しくなった」と感じるシニアも少なくありません。
副業・フリーランス|現役時代のスキルを活かす
定年後の副業やフリーランスという働き方も、近年注目を集めています。
現役時代に培った専門知識やスキルを活かし、週2〜3日程度の無理のないペースで働くスタイルは、収入を補いながら自由な時間も確保できるバランスの良い選択肢です。
コンサルティング、翻訳、ライティング、ITサポートなど、自宅でできる仕事の幅も広がっており、シニア世代の参入ハードルは着実に下がっています。
ボランティア活動|「社会への貢献」が生きがいになる
収入を目的とせず、社会に貢献することで生きがいを見出す「ボランティア活動」も、定年後の充実した働き方のひとつです。
福祉施設でのお手伝い、子どもの学習支援、地域の環境整備など、活動の種類は幅広く、資格や経験がなくても始められるものが多数あります。
「ありがとう」と言ってもらえる体験が自己肯定感を高め、心の豊かさにつながると多くのシニアが語っています。
定年後に「仕事」という役割を持ち続けることは、こころの健康にも好影響をもたらします。
ニッセイ基礎研究所の調査では、定年後に何らかの形で働き続けた方は、そうでない方に比べて幸福度や心の健康状態が改善された可能性が示唆されています。
「働くこと」は単なる収入源ではなく、毎日にリズムと張り合いをもたらす大切な要素といえるでしょう。
お金・健康・人間関係|充実した老後の3つの柱
定年後の生活満足度を高めるうえで、特に重要な要素が「お金」「健康」「人間関係」の3つです。
NRI社会情報システムが65歳以上のシニア1,009人を対象に実施した調査では、シニアの不安・悩みの1位は「自分の健康」(65.0%)、2位は「老後の生活費・経済的なゆとり」(48.0%)、3位は「配偶者の健康や介護」(40.1%)という結果が出ています。
つまり、多くの方が共通してこの3つの領域に不安を抱えており、裏を返せばここをしっかり整えることが、充実したセカンドライフへの最短ルートといえます。
1. お金|「最低限」と「ゆとり」の目安を知っておく
老後の生活費について、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2025年度)」によると、夫婦2人が老後生活を送るうえで必要と考える最低日常生活費は月額平均23.9万円という結果が出ています。
さらに、「ゆとりある老後生活費」は平均で月額39.1万円とされており、旅行や趣味を楽しむためには、それなりの備えが必要であることがわかります。
お金の不安を減らすためにできることは、大きく2つあります。
ひとつは支出の見直しです。
定年後は収入が減ることが多いため、固定費(保険・通信費・住居費など)を定期的に見直すことで、支出を適切にコントロールできます。
もうひとつは資産の活用です。
退職金や年金だけに頼らず、少額投資(iDeCoやNISAなど)を活用して資産を育てるという考え方も、今の時代には現実的な選択肢のひとつです。
「老後のお金」に漠然とした不安を感じている方は、まずファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみることをおすすめします。
2. 健康|「動き続けること」が最大の資産
健康は、お金や人間関係にも優先すると感じているシニアが多く、2025年の調査では「健康面への不安」を感じているシニアは実に83.7%にのぼっています。
定年後に健康を維持するうえで最も効果的なのは、「運動習慣を作ること」です。
第2章でも触れたように、ウォーキングや水泳などの軽い有酸素運動を週2〜3回続けるだけで、体力の低下を緩やかにし、認知症リスクを下げる効果が期待できます。
食事・睡眠・定期健診の3点セットも、健康寿命を延ばすうえで外せない要素です。
厚生労働省が示す「人生100年時代における高齢者の生き方」においても、健康診断の受診と主観的健康感の高さが、充実した老後生活と深く関連していることが示されています。
「病気になってから考える」のではなく、定年を機に生活習慣を見直すことが、長く元気に過ごすための賢明な選択です。
3. 人間関係|定年後こそ「つながり」が豊かさを決める
NRI社会情報システムの調査によると、現役時代に人付き合いが「かなり広かった」男性の34.0%が、リタイア後に「かなり少なくなった」と感じています。
一方で、現役時代には人間関係が限られていた人でも、定年後に地域活動や趣味のコミュニティに参加することで、むしろ人間関係が広がったと感じるケースもあるとされています。
定年退職で生まれた自由な時間を、新たなつながりを作るための好機と捉えることが大切です。
孤独は健康に悪影響をもたらすことが多くの研究で示されており、「人とつながること」は精神的健康に直結します。
ダイヤモンド・オンラインの記事でも、「人間関係にコストをかけてきた人ほど、定年後も孤独にならない」という傾向が指摘されています。
趣味のサークルや地域のイベント、オンラインコミュニティなど、自分が心地よく参加できる場をひとつでも見つけることが、充実した定年後の人間関係づくりの第一歩となります。
定年後にやってはいけないこと5選
充実したセカンドライフを送るためには、「何をするか」と同じくらい「何をしないか」を知っておくことが大切です。
定年後に後悔した方たちの体験談に共通して登場する落とし穴を、5つにまとめてご紹介します。
1. 引きこもり・閉じこもり生活を続ける
定年退職によって毎日の通勤や職場での人間関係がなくなると、外出する動機が一気に減ります。
SMBCの分析によると、定年後は「やるべきこと・やりたいことがなくなること」によって自然と引きこもりがちになり、結果として「閉じこもり」状態に陥るリスクがあると指摘されています。
閉じこもりと社会的孤立が重なった高齢者は、そうでない方と比べて4年後の総死亡リスクが約3倍になるという研究結果もあり、健康面での影響は深刻です。
外出の習慣を意識的に作ることが、この落とし穴を回避する最善策です。
散歩やスーパーへの買い物など、小さな外出でも十分です。
毎日決まった時間に外に出るルーティンを持つだけで、生活リズムが安定し、孤立を防ぐことができます。
2. 退職金・老後資金をハイリスクな投資につぎ込む
定年後に「退職金を増やしたい」という気持ちから、経験のない投資や怪しい勧誘に乗ってしまうケースは少なくありません。
定年退職後の失敗パターンとして「投資で大損」は非常に多く、退職金という一度しか得られない大切な資産を失った事例が数多く報告されています。
焦りや「もっと豊かにしたい」という気持ちが判断を曇らせることがありますので、退職金の運用は必ず専門家(FP・信頼できる金融機関)に相談してから動くことが鉄則です。
3.夫婦関係の見直しを先送りにする
定年後は、配偶者と一緒にいる時間が劇的に増えます。
現役時代には見えなかった生活習慣の違いや価値観のズレが表面化し、夫婦間のトラブルにつながるケースが多く報告されています。
「定年離婚」という言葉があるほど、定年後の夫婦関係の崩壊は珍しくないのが現実です。
定年前から「定年後の二人の生活をどう過ごすか」をパートナーと話し合っておくことが、大きなトラブルを未然に防ぐための最も効果的な方法です。
お互いの趣味や一人の時間を尊重し合える関係づくりを、早めに意識しておきましょう。
4. 過去の肩書きや地位にこだわり続ける
定年後に地域のコミュニティや趣味のサークルに参加した際、現役時代の肩書きや役職を誇示する態度は、周囲との関係を一気に遠ざけてしまいます。
「元〇〇部長」「元〇〇社勤務」といった過去の栄光にしがみつく姿勢は、新たな仲間や場所に馴染む妨げとなり、孤立を招く原因にもなります。
定年後は全員が「同じスタートライン」に立つ場が多く、素の自分で新しい関係を築くことが、豊かな人間関係への近道です。
5.「いつかやろう」と先延ばしし続ける
「体が元気なうちに旅行に行こう」「落ち着いたら趣味を始めよう」と思いながら、具体的な行動を先延ばしにしている方は少なくありません。
しかし、健康状態は年齢とともに少しずつ変化するため、「動けるうちにやりたいことをやる」という姿勢が、充実したセカンドライフを実現するうえで非常に重要です。
「今日できることを今日始める」という小さな一歩の積み重ねが、10年後の自分の笑顔につながります。
まとめ|自分らしいセカンドライフの第一歩を踏み出そう
定年後の過ごし方に、正解はひとつではありません。
旅行を思い切り楽しむ人もいれば、地域のボランティアに生きがいを見つける人もいます。
趣味に没頭する人もいれば、週3日だけ働き続けることで充実感を保つ人もいます。
大切なのは、「世間一般の正解」ではなく、自分が心から「これが楽しい」「これが心地よい」と感じられる過ごし方を見つけることです。
本記事でご紹介したランキングや調査データも、あくまでひとつの参考にすぎません。
ただ、多くのシニアの声が共通して示すことがひとつあります。
それは、「何もしないで家にいるだけでは、充実感は得られない」という現実です。
体を動かすこと、人とつながること、何か夢中になれるものを持つこと、この3つが揃ったとき、定年後の毎日はぐっと豊かになります。
今日から始める3つの小さなアクション
まずは、「やってみたいこと」を3つ書き出してみることをおすすめします。
旅行でも、料理でも、地域のサークルでも構いません。
頭の中にあるだけでは行動にならないことも、紙に書き出すことで現実味を帯びてきます。
次に、その中でもっとも気軽に始められそうなものを、今週中に「一歩だけ」試してみてください。
ウォーキングコースを調べてみる、地元の料理教室の日程を検索してみる、旅行サイトで行きたい場所を眺めてみるだけでも十分です。
小さな一歩が、その後の充実した日々への扉を開きます。
そして最後に、「一人で抱え込まない」ことを意識してください。
お金のことで不安があればFPへ、健康のことで気になることがあれば主治医へ、気軽に相談できる専門家を持っておくことが、セカンドライフを安心して楽しむための心強い土台になります。
定年後の時間は、これまでの人生で誰かのために使ってきた時間を、ようやく自分のために使える貴重な時間です。
焦らず、比べず、自分らしいペースで、一歩ずつ前に進んでいきましょう。
