高齢者におすすめの趣味|70代・80代でも続けられる選び方

趣味を持つ高齢者は、持たない高齢者よりも健康寿命が長いという研究があります。
65歳以上の日本人高齢者約48,000名を対象とした6年間の追跡調査では、趣味の数が多いほど死亡リスクが低下することが確認されています。
ただし、若い頃と同じ感覚で趣味を選ぶと、体や関節への負担が思いのほか大きく、長続きしないことも少なくありません。
本記事では、次のことをお伝えします。
- 高齢者が趣味を持つことの意味と、健康・認知機能への関連性
- 体力・健康状態に合わせた趣味の選び方の基準
- 室内・軽い運動・交流の3タイプ別のおすすめ趣味
- 家族が高齢の親に趣味を勧めるときの具体的な声のかけ方
なお、定年直後(50〜60代)の趣味選びについては、別記事「定年後のおすすめ趣味12選」で詳しく解説しています。
本記事では70代以上の方を中心に、年齢に合った趣味の「選び方の基準」に絞ってお伝えします。
高齢者が趣味を持つことの意味
健康・認知機能への影響
趣味を持つことは、単なる暇つぶしではありません。
身体活動の機会が増え、人との交流が生まれ、手先や頭を使うことで脳への刺激につながる、という複合的な効果があると考えられています。
JAGES(日本老年学的評価研究)プロジェクトが65歳以上の高齢者48,216名を対象に行った6年間の追跡研究では、趣味の数が0個の人と比べて、2個の人では10%、5個の人では31%、死亡リスクが低い結果が得られています。
また、趣味のタイプ別に見ると、「身体を動かす趣味」と「誰かと一緒に行う趣味」が死亡リスクの軽減に特に関連が深いとされています。
認知機能との関係についても、研究が進んでいます。
国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターは、加齢にともなって脳は少しずつ老化していくものの、「認知の予備力」を豊かにすることで認知機能を維持し続けることができると述べています。
そして知的な刺激にあふれるライフスタイル、すなわち趣味を楽しむ時間を持つことが、この「認知の予備力」を蓄える効果があると考えられています。
また、同センターの認知症予防に関するページでは、定期的な運動習慣、社会活動への参加、人との交流や外出などが認知症になる危険性を低くすることが報告されており、これらを組み合わせて実施することが効果的とされています。
趣味を通じて外出し、誰かと話し、手や頭を動かすという行為が、結果的にこれらの要素をまとめて取り入れることにつながるわけです。
「趣味が認知症を予防する」と断言することは科学的に難しいですが、趣味を楽しむ生活習慣が脳への刺激や社会的なつながりと深く関係しているという点は、さまざまな研究で指摘されています。
「今さら始めても…」という思い込みを外す
70代・80代になってから新しい趣味を始めることに、後ろめたさや照れを感じる方も少なくありません。
「今さら上手くなれるわけがない」「若い人たちの中で浮いてしまうのでは」という気持ちは、自然なものです。
しかし、高齢者にとっての趣味の目的は、若い頃とは異なります。
大切なのは、上手くなることでも、誰かと競うことでもなく、「楽しむこと」と「続けること」そのものです。
散歩のペースを自分で決める自由、手芸の出来上がりを眺める喜び、囲碁の一手に悩む充実感、そういったささやかな時間の積み重ねが、生活にリズムと張りをもたらします。
家族から「一緒にやってみない?」と誘われたことがきっかけで始める方や、介護施設や地域のプログラムで初めて出会った趣味にはまる方も多くいます。
始めるきっかけは何であれ、試してみた一歩が大切です。
「合わなかったらやめればいい」という気楽な姿勢が、長続きする趣味と出会うための近道といえます。
高齢者の趣味選びで大切にしたい3つの基準
趣味を選ぶとき、どれが自分に合っているのかと迷うことは多いものです。
70代以上の方が趣味を選ぶ際には、次の3つの視点を持つと判断がしやすくなります。
最初に考えたいのは、体への負担が少ないかどうかという点です。
若い頃に楽しんでいたスポーツや山歩きが、体の変化とともに負担に変わることがあります。
特に転倒リスク、持病の有無、膝や腰などの関節への負荷は、70代以上では慎重に考えたい要素です。
「ちょっと物足りないくらい」の運動量からスタートし、体の反応を見ながら少しずつ慣れていく方法が、長く続けるためには適しています。
始める前に主治医や家族と相談し、体の状態に合った活動を選ぶことが安心につながります。
次に意識したいのは、一人でも続けられるかという点です。
仲間がいないと参加できない趣味は、スタート時のハードルが高く、体調不良や季節の変わり目に「今日は行かなくていいか」となりやすいものです。
自宅でできる読書や手芸、近所を歩くウォーキングのように、自分のペースで取り組める趣味は、継続しやすい傾向があります。
ただし、人との交流が生まれる趣味には孤立を防ぐ効果があるとも言われています。
完全に一人でなくても構いませんが、「仲間がいなくても今日もできる」という状況を持っておくことが、継続の鍵になります。
3つ目は、小さく始められるかどうかです。
初期費用が高い、道具を揃えるのが大変、遠くまで通わなければならない、というような趣味は、始める前の段階でエネルギーを使い果たしてしまいます。
「まず1回試してみる」という感覚で動けるかどうかが、最初の一歩を踏み出せるかを大きく左右します。
体験教室や無料の公民館講座など、お試しで参加できる機会を活用すると、負担なく始めることができます。
体力別・おすすめ趣味の選び方
一口に「高齢者向けの趣味」といっても、体力や生活スタイルは人によってさまざまです。
ここでは、体の状態や外出のしやすさを基準に、3つのタイプに分けてご紹介します。
体力に自信がない方・外出が難しい方(室内中心)
外出が難しい方や、体を動かすことに不安がある方でも、自宅の中で十分に楽しめる趣味はたくさんあります。
読書・電子書籍は、道具も費用も最小限で始められる趣味の筆頭です。
紙の本が読みにくくなってきた方には、文字サイズを自由に調整できる電子書籍が選択肢として広がっています。
スマートフォンやタブレットを使えば、目の疲れに合わせて文字の大きさを変えられますし、重い本を持つ必要もありません。
夜寝る前の読書タイムや、午後のひとときを本の世界に費やすことは、日常に静かな充実感をもたらしてくれます。
手芸・編み物・ぬり絵は、手先を細かく動かすことで脳への刺激につながると言われています。
完成したものを誰かにプレゼントしたり、飾って眺めたりする楽しみもあり、達成感を感じやすい点も続けやすさにつながります。
最近では大人向けの「ぬり絵」が充実しており、絵の得意・不得意に関係なく集中して取り組める時間を作れます。
一つの作業に没頭する時間は、雑念を払って心を整える効果があるとも言われています。
囲碁・将棋・麻雀は、思考力と記憶力をフルに使うゲームです。
次の手を読む、相手の動きを予測する、といった思考のプロセスが脳への刺激になります。
多くの地域に囲碁・将棋サークルや麻雀クラブがあり、同世代の仲間と定期的に集まる機会にもなります。
「ゲームとして楽しみながら、自然と人とのつながりも生まれる」という点が、この趣味の大きな魅力です。
ガーデニング・室内植物の世話は、庭がなくてもベランダや窓辺の鉢植えから始められます。
植物が芽を出したとき、花が咲いたとき、実がなったときの喜びは格別です。
水やりや植え替えという日課ができることで、生活にリズムが生まれます。
生き物を育てる責任感と、季節の変化を身近に感じる暮らしは、気持ちを前向きに保つことにつながります。
体を動かしたい方・外出できる方(軽い運動系)
「少し体を動かしたい」という方には、体への負担が少なく、続けやすい運動系の趣味が向いています。
ウォーキング・散歩は、高齢者の趣味のなかでも最も始めやすく、続けやすいものの一つです。
特別な道具も費用も必要なく、慣れた近所の公園や商店街を歩くことから無理なく始められます。
「毎日15分歩く」「週に3回近くの公園まで行く」という小さな目標から始め、体が慣れてきたら少しずつ距離を伸ばしていく方法が無理なく続くコツです。
歩きながら季節の花を眺めたり、なじみの店に立ち寄ったりするルーティンが加わると、外出そのものが楽しみに変わっていきます。
ヨガ・体操・太極拳は、関節への負担が少なく、柔軟性やバランス感覚の維持に役立つと言われています。
厚生労働省eJIM(統合医療情報発信サイト)が紹介するレビューによれば、太極拳は転倒経験者数を20%減らす可能性があるという確実性の高いエビデンスが得られているとされています。
シニア向けのクラスでは動きがゆっくりと設定されており、運動経験がない方や体力に不安がある方でも参加しやすいのが特徴です。
地域の公民館やカルチャーセンターでシニア向けクラスを探してみると、同世代の仲間とともに無理なく体を動かす場が見つかることが多いでしょう。
水泳・水中ウォーキングは、水の浮力によって関節への負担が大幅に軽減されるため、膝や腰に痛みがある方にも取り組みやすい運動です。
厚生労働省e-ヘルスネット(アクアエクササイズ)によれば、水の浮力によって肥満や足腰に疾患がある方でも膝や腰への負担が軽くなり、楽に運動できるとされています。
プールの水深が胸の高さにある場合は、体重の約70%が浮力で支えられるとも言われており、陸上では難しい運動も水中では無理なく続けられます。
近くにスポーツセンターやプールがある方は、シニア向けの水中体操クラスに参加してみることをおすすめします。
人とのつながりを大切にしたい方(交流・社会参加系)
一人で取り組む趣味も良いものですが、誰かと一緒に楽しむ趣味は、孤立を防ぎ、生活に社会的なつながりをもたらします。
カルチャーセンター・公民館講座は、料理・書道・写真・俳句・パソコンなど、さまざまなジャンルのプログラムが揃っています。
参加者の多くが一人で申し込んでおり、「知り合いがいないと参加しにくい」という心配は無用です。
同世代の受講生と顔を合わせるうちに自然と会話が生まれ、共通の話題で打ち解けていくことも多くあります。
講座を一つのリズムにして週に一度通うことが、外出の習慣と仲間づくりを同時に叶えてくれます。
地域ボランティアは、長年で培った経験やスキルを社会に還元できる趣味です。
子どもの見守り活動、図書館での読み聞かせ、地域の行事の手伝いなど、内容はさまざまです。
「誰かの役に立てた」という実感は自己肯定感を高め、生きがいにつながりやすいとされています。
役割を持って人と関わる場があることは、精神的な充実にとって大きな意味を持ちます。
コーラス・合唱は、声を出すことで呼吸筋が鍛えられ、呼吸機能の維持につながると言われています。
深く息を吸って声を出す動作が腹式呼吸を促し、口周りの筋肉も自然と使われます。
グループで一つの曲を仕上げるという経験は、連帯感や達成感をもたらします。
シニア向けの合唱サークルは全国各地にあり、音楽経験がなくても参加できるものが多く、「歌うこと」への敷居は意外なほど低いものです。
家族が高齢の親に趣味を勧めるときのポイント
親に何か趣味を持ってほしい、引きこもりがちな様子が心配だ、という状況で、どう背中を押せばいいか悩む方は多くいます。
押しつけにならない誘い方
大切なのは、「あなたのためになるから」という姿勢で勧めないことです。
良かれと思っての言葉でも、「やらされる」という感覚が先に立つと、相手の気持ちは動きません。
「一緒にやってみない?」「面白そうだから一回見に行かない?」という声のかけ方のほうが、自然に興味を引きやすいものです。
体験教室や見学に一緒に付き添う、道具を一緒に選びに行く、といった形で家族が最初の一歩に関わることが有効です。
「やるかどうかは行ってから決めればいい」という気楽な雰囲気で連れ出すことが、本人の「やってみようかな」という気持ちを引き出します。
親が自分の意志で選んだと感じられるかどうかが、その後の継続にも大きく影響します。
続かなくても焦らない
趣味が長続きするかどうかは、最初の数回の体験でほぼ決まることが多いものです。
体が思うように動かなかった、思っていた内容と違った、雰囲気がなじめなかった、そういった理由で続かないことは珍しくありません。
「合わなかっただけ」であり、失敗ではありません。
一つの趣味がうまくいかなかったとしても、別のものを試せばよいだけです。
家族が「もったいない」「また三日坊主だ」という目を向けると、本人がプレッシャーを感じ、次のチャレンジに対しても後ろ向きになってしまいます。
むしろ「合わなかったね、次は何を試してみようか」と前向きに切り替える姿勢が、長い目で見ると本人の趣味探しを支える力になります。
過度な期待やプレッシャーは逆効果になりやすいという点を、家族側が意識しておくことが大切です。
よくある質問
Q1. 認知症予防に効果的な趣味はありますか?
特定の趣味が認知症を直接予防するとは言い切れませんが、手先を動かす、人と交流する、思考を使うといった要素を含む趣味が、脳への刺激につながると言われています。
国立長寿医療研究センターも、知的な刺激にあふれるライフスタイルが「認知の予備力」を蓄えると指摘しており、趣味を楽しみ続けることが認知機能の維持と深く関係しているとされています。
どんな趣味であっても、本人が興味を持って取り組み、継続することが最も大切です。
Q2. 一人暮らしの高齢者でも続けられる趣味はありますか?
はい、自宅でできる趣味は一人でも十分続けられます。
読書・電子書籍、ガーデニングや室内植物の世話、手芸・ぬり絵などは、誰かと一緒でなくても楽しめる趣味の代表例です。
また、カルチャーセンターや公民館講座は一人で参加することが当たり前の場であり、一人暮らしの方でもなじみやすい環境です。
社会とのつながりを保ちながら、自分のペースで続けられる趣味を見つけることが大切です。
Q3. 体力が落ちてきた親に何か勧めたいのですが、どう声をかければいいですか?
「一緒に体験教室に行ってみない?」という提案が最も受け入れられやすい方法の一つです。
押しつけにならないよう、あくまで「試してみる」という気軽なトーンで誘ってみましょう。
続かなくても焦らず、合わなければ別の趣味を一緒に探す、という姿勢でサポートすることが、長期的な趣味探しを助けます。
家族が最初の一歩に付き合うだけで、本人のハードルがずいぶん下がることが多いものです。
まとめ
年齢に合った趣味を無理なく続けることが、健康寿命を延ばす近道といえます。
体力に自信がない方や外出が難しい方には、読書・手芸・囲碁・ガーデニングなど自宅でできる室内の趣味が向いています。
体を動かしたい方には、ウォーキングや太極拳、水中ウォーキングのような関節に優しい軽い運動系の趣味が続けやすいでしょう。
人とのつながりを大切にしたい方には、カルチャーセンター、地域ボランティア、コーラスといった交流・社会参加型の趣味が生きがいにつながります。
どのタイプの趣味でも、大切なのは「上手くなること」ではなく「楽しんで続けること」です。
一つ試してみて合わなければ、別のものを探せばいい、その繰り返しが自分に合った趣味との出会いをもたらします。
定年直後(50〜60代)の趣味の始め方については、別記事「定年後のおすすめ趣味12選」でも詳しく紹介しています。
あわせてご参照ください。
