定年退職後の失業保険について、「実際にいくらもらえるのか」「どうやって手続きをすればいいのか」といった具体的な疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
受給額は退職前の賃金をもとに計算されますが、60歳以降は給付率が異なるため、現役時代の感覚で見込んでいると実際の金額との差に戸惑うこともあります。
本記事では、定年退職後の失業保険の受給額の計算方法、ハローワークでの手続きの時系列での流れ、必要書類のリスト、受給中の注意点まで、実務に役立つ情報を網羅的にお伝えします。
失業保険全体の仕組みや受給条件については定年退職後の失業保険完全ガイド|いつから・いくら・手続きの全手順をあわせてご覧ください。
待機期間の詳細については定年退職後の失業保険、待機期間はいつから?60歳・65歳別の違いを解説で詳しく解説しています。
なお、退職後に同じ会社で再雇用された方の体験談については【体験談】再雇用で給料が半分になった現実と、それでも続けることにした理由も参考になります。
定年退職後の失業保険、いくらもらえる?計算方法
失業保険(基本手当)の受給総額は「基本手当日額 × 所定給付日数」で計算します。
まずは1日あたりの受給額である「基本手当日額」を求めることが計算の出発点になります。
基本手当日額の計算式(ステップ①〜③)
基本手当日額を算出するには、以下の3つのステップを順に踏みます。
ステップ①:賃金日額を求める
賃金日額とは、退職直前6ヶ月間に実際に支払われた賃金の合計を180で割った1日あたりの平均賃金額です。
計算式は「賃金日額 = 離職前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180」となります。
この「賃金」には基本給のほか、残業代・通勤手当・住宅手当なども含まれます。
一方で、賞与(ボーナス)・退職金・各種祝金などは含まれません。
また、賃金日額には年齢区分ごとに上限額が定められています。
ステップ②:給付率を確認する
60歳以上64歳以下の定年退職者に適用される給付率は「45〜80%」の範囲内です。
賃金日額が低い方ほど給付率が高く設定されており、賃金が高い方ほど率は下がる仕組みになっています。
一般的な定年退職者の賃金帯では、給付率が50〜60%程度になるケースが多いですが、個人の賃金水準によって異なります。
ステップ③:基本手当日額を算出する
「基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(45〜80%)」で計算します。
2025年8月1日以降の改定では、60歳以上65歳未満の基本手当日額の上限は1日7,623円となっています(毎年8月に改定されるため、最新情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください)。
また、下限額は全年齢共通で2,411円(2025年8月1日以降)です。
実際の計算例(月給30万円の場合)
月給30万円(賞与・退職金を除く、通勤手当等を含む)で定年退職したケースを例に計算してみましょう。
まず賃金日額を求めます。
「300,000円 × 6ヶ月 ÷ 180 = 10,000円」となります。
次に基本手当日額を求めます。
賃金日額10,000円の場合、60〜64歳の給付率はおおよそ50%前後が目安となりますが、給付率の計算式は複雑です。
仮に給付率を55%として計算すると「10,000円 × 55% = 5,500円」が基本手当日額の概算となります。
給付日数が150日(雇用保険加入20年以上)であれば、受給総額の概算は「5,500円 × 150日 = 825,000円」となります。
ただし、この計算はあくまでも目安です。
正確な受給額はハローワークで離職票を提出した後に確定しますので、詳細はハローワークの窓口で確認することをおすすめします。
60歳以降は給付率が下がる理由
60〜64歳の定年退職者に適用される給付率の下限が「50%から45%」となっているのは、制度上、この年代では老齢年金の受給が視野に入っているという前提があるためです。
60歳未満の方の給付率が「50〜80%」であることと比較すると、高い賃金帯での下限が5%低く設定されています。
とはいえ、賃金水準によっては59歳以下と同等の給付率が適用されるケースもありますので、ご自身の賃金日額をもとに確認してみてください。
何ヶ月もらえる?受給期間の確認
定年退職後の失業保険の給付日数は、雇用保険への加入期間によって決まります。
定年退職は「一般の離職者」として分類されるため、以下の表をもとに確認してください。
| 雇用保険加入期間 | 給付日数 | 月換算の目安 |
|---|---|---|
| 10年未満 | 90日 | 約3ヶ月 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | 約4ヶ月 |
| 20年以上 | 150日 | 約5ヶ月 |
一般的な会社員として定年まで勤めた方は、雇用保険の加入期間が20年以上となることがほとんどであるため、最大150日間(約5ヶ月分)の給付が受けられます。
基本手当日額が5,500円であれば、総受給額は最大で82.5万円という試算になります。
なお、受給期間は「退職翌日から1年以内」という期限があります。
給付日数が残っていても、この1年を超えると受給できなくなりますのでご注意ください。
定年退職後にしばらく休養してから求職活動を始めたい方は、退職翌日から2ヶ月以内に受給期間の延長申請をハローワークで行うことで、受給期間を最大2年間に延ばすことができます。
ハローワークでの手続きの流れ(時系列)
定年退職後の失業保険の受給は、ハローワークでの一連の手続きを経て始まります。
退職日から最初の振り込みまでの流れを時系列で整理します。
ステップ①:退職後すぐにやること(離職票の受け取り)
退職前に、会社の人事担当部署に「離職票を発行してほしい」と申し出ておきましょう。
59歳以上の離職者については希望の有無にかかわらず離職票の発行が義務付けられていますが、念のため事前に確認しておくと安心です。
離職票は会社がハローワークへ届出を行った後に発行され、通常は退職後10日前後に会社から郵送で届きます。
2025年1月20日からは、事前にマイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携設定をしておくことで、マイナポータル上で離職票のPDFを直接受け取ることも可能になりました。
離職票が届いたら、離職票-2の「離職理由」欄の記載内容を必ず確認してください。
定年退職の場合は「定年による退職」として記載されているはずですが、内容に誤りがあるとハローワークで申告することができます。
ステップ②:ハローワークへ行く(求職の申し込み・受給資格決定)
必要書類を持参し、居住地を管轄するハローワークへ出向きます。
窓口で求職の申し込みと離職票の提出を行います。
この申し込みをした日が「受給資格決定日」となり、7日間の待機期間がここからスタートします。
手続きの際、ハローワークの担当者から受給資格に関する説明があり、「雇用保険受給者初回説明会」の日程が案内されます。
初回説明会は受給資格決定日からおおむね1〜2週間後に設定されることが多いです。
待機期間の仕組みや注意事項については[子記事①「定年退職後の失業保険、待機期間はいつから?」]もあわせてご参照ください。
ステップ③:雇用保険受給者初回説明会への参加
指定された日時にハローワークへ行き、初回説明会に参加します。
この説明会では、失業保険の受給に関するルールや、認定日の仕組み、求職活動の記録方法などについての説明があります。
説明会の場で「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付され、第1回認定日の日程も通知されます。
雇用保険受給資格者証には、あなたの基本手当日額と所定給付日数が記載されていますので、受給額の確認ができます。
ステップ④:7日間の待機期間終了
ハローワークへの申し込み日から7日間の待機期間が終了します。
この間はアルバイトも含む収入が発生する活動は控えてください。
待機期間中に就労すると、その日数分だけ待機期間が延長されてしまいます。
ステップ⑤:初回認定日(第1回)
指定された初回認定日にハローワークへ出向き、「失業認定申告書」を提出します。
待機期間を問題なく過ごしていたこと、そして1回以上の求職活動実績があることを確認してもらいます。
これにより、待機期間終了翌日から初回認定日前日までの日数分の基本手当が支給対象となります。
ステップ⑥:基本手当の振り込み(初回)
認定日から約5営業日(1週間以内)を目安に、届け出た口座に基本手当が振り込まれます。
定年退職の場合、ハローワークへの申し込みから最初の振り込みまでの期間は、おおむね1ヶ月程度が目安です。
ステップ⑦:2回目以降の認定日(28日サイクル)
初回認定日以降は4週間(28日)ごとに認定日が設定され、その都度ハローワークへ出向いて「失業認定申告書」を提出します。
2回目以降の認定日では、前回認定日から今回認定日前日までの期間内に2回以上の求職活動実績が必要です。
認定を受けるたびに28日分の基本手当が振り込まれ、これが所定給付日数を使い切るまで続きます。
必要書類チェックリスト
ハローワークで受給手続きをする際には、以下の書類を漏れなく準備してください。
①離職票-1(雇用保険被保険者資格喪失届)
退職後に会社から受け取る書類です。
振込先の金融機関情報を事前に記入しておく必要があります(個人番号欄はハローワーク窓口で記入)。
②離職票-2(雇用保険被保険者離職証明書)
退職前6ヶ月の賃金や離職理由が記載された書類です。
定年退職の場合は「定年による退職」と記載されているはずですが、内容を確認の上持参してください。
マイナポータルで受け取った場合は、印刷した上で持参します。
③個人番号確認書類および身元確認書類
マイナンバーカード1枚があれば個人番号の確認と身元確認を同時に行えます。
マイナンバーカードがない場合は、通知カードまたはマイナンバー記載の住民票と、運転免許証などの身元確認書類が必要です。
④写真2枚(縦3cm×横2.4cm)
本人と確認できる直近の写真を2枚用意します。
なお、マイナンバーカードを毎回提示することを申し出た場合は写真の省略が可能です。
⑤本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
基本手当の振込先口座を確認するために必要です。
一部のインターネット専業銀行は対応していないことがあるため、事前に窓口で確認しておくと安心です。
⑥印鑑(シャチハタ不可)
朱肉を使うスタンプ印タイプの印鑑を持参してください。
⑦雇用保険被保険者証(あれば)
在職中に会社が保管しているケースが多いため、退職時に受け取るか確認しておきましょう。
受給中の注意点
基本手当の受給中は、いくつかのルールを守る必要があります。
知らずに違反してしまうと不正受給とみなされるリスクがあるため、事前に把握しておくことが重要です。
アルバイトの上限(週20時間・申告必須)
失業保険の受給期間中にアルバイトをすることは、一定の条件のもとで認められています。
週の労働時間が20時間未満であれば就職とはみなされず、基本手当を受け取ることができます。
ただし、その期間に得た賃金の額によっては基本手当が減額されることがありますし、週20時間以上の就労は「就職(または就労)」とみなされ、その日分の支給が止まります。
アルバイトをした場合は、必ず「失業認定申告書」に正直に申告することが求められます。
申告しないまま就労していた場合は不正受給となり、受け取った給付の返還に加えて最大3倍の納付を求められることがあります。
少しでも就労した日がある場合は申告を徹底してください。
健康保険の手続き(任意継続 or 国民健康保険)
定年退職後は会社の健康保険から外れるため、自分で健康保険に加入し直す必要があります。
選択肢としては主に3つあります。
在職中に加入していた健康保険に「任意継続被保険者」として最大2年間加入し続ける方法は、会社の健康保険の給付内容を維持できるメリットがあります。
ただし、在職中は会社が半分負担していた保険料を退職後は全額自己負担するため、保険料が増額になるケースが多いです。
国民健康保険への加入は、前年の所得をもとに保険料が計算されます。
定年退職後に収入が大幅に下がる場合は、任意継続よりも国民健康保険の保険料が低くなることがあるため、退職前に両方の保険料を試算して比較することをおすすめします。
配偶者の扶養に入る方法は保険料の自己負担がゼロになりますが、失業保険の受給期間中は基本手当日額が3,612円以上の場合に扶養に入れない点に注意が必要です。
健康保険の選び方については[退職後の健康保険の選び方(別記事)]も参考にしてください。
確定申告は必要?
基本手当(失業保険)は非課税所得であるため、基本手当の受給自体に所得税はかかりません。
ただし、同じ年の1月から退職月までの給与所得がある場合、定年退職後に会社が年末調整を行わないケースでは、翌年2〜3月に確定申告が必要になることがあります。
特に再就職をしないまま年を越した場合や、アルバイト収入があった場合は、確定申告の要否をご自身で確認することをおすすめします。
退職後の住民税についても、在職中とは納付方法が変わりますので、退職後の住民税に関する情報も事前に確認しておくと安心です。
よくある疑問・FAQ
Q. 申請期限はいつまでですか?
A. 失業保険の受給期間は退職翌日から1年以内です。
離職票が届いてから手続きが遅れると、その分だけ受給できる日数が実質的に短くなってしまいます。
離職票が届き次第、なるべく早くハローワークへ行くことをおすすめします。
しばらく休養してから求職活動を始めたい場合は、退職翌日から2ヶ月以内に「受給期間延長申請」をハローワークで行ってください。
Q. 再就職が決まったら再就職手当はもらえますか?
A. 失業保険の受給中に再就職が決まった場合、条件を満たせば「再就職手当」を受け取ることができます。
所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合に支給されます。
残日数が所定給付日数の3分の2以上であれば「基本手当日額 × 残日数 × 70%」、3分の1以上3分の2未満であれば「基本手当日額 × 残日数 × 60%」が支給されます。
なお、再就職手当の計算における基本手当日額には上限があり、60〜64歳の場合は5,310円(2025年8月1日以降)が上限です。
給付日数を多く残した状態で早期に再就職するほど、受け取れる金額が大きくなる仕組みです。
受給するためには一定の要件を満たす必要がありますので、再就職が決まったらすぐにハローワークへ報告して手続きを進めてください。
Q. ハローワークで職業訓練を受けることはできますか?
A. 失業保険の受給中にハローワークが指定する公共職業訓練を受講することができます。
訓練受講中は認定日のルールが通常と異なり、給付日数が終了した後も「訓練延長給付」として基本手当が延長されるケースがあります。
定年退職後に新しい仕事に向けてスキルを身につけたい方にとって、費用の負担なく学べる有益な制度です。
受講する訓練の種類や期間はハローワークで相談・紹介を受けられますので、窓口での相談をおすすめします。
Q. 離職票が届く前にハローワークへ行ってもいいですか?
A. 原則として離職票を提出した上で受給手続きを行いますが、退職後2週間を過ぎても離職票が届かない場合は、離職票なしでも仮の手続きができる場合があります。
まずハローワークへ相談することをおすすめします。
また、会社に対して早めの発行を催促することも大切です。
Q. 退職後の住民税はどうなりますか?
A. 在職中は毎月給与から天引き(特別徴収)されていた住民税が、退職後は自分で一括納付または分割納付する形(普通徴収)に切り替わります。
定年退職の場合、最後の給与や退職金から未納分を一括で差し引かれることも多いですが、翌年の6月以降に新たに住民税の納税通知書が届く場合もあります。
退職後の住民税については[退職後の住民税(別記事)]でも詳しく解説しています。
まとめ
定年退職後の失業保険のもらい方について、受給額の計算方法、ハローワークでの手続きの時系列の流れ、必要書類、受給中の注意点まで解説しました。
基本手当日額は「退職前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180 × 給付率(45〜80%)」で算出します。
60〜64歳の上限額は1日7,623円(2025年8月1日以降)で、雇用保険加入20年以上の定年退職者には最大150日間の給付が受けられます。
ハローワークでの手続きは、離職票を受け取り次第できるだけ早めに進めることが重要です。
受給期間は退職翌日から1年以内という期限があるため、手続きを先延ばしにすると受給できる日数が減ってしまいます。
受給中はアルバイトのルールを守り、就労した日は必ず申告することを忘れないようにしましょう。
健康保険の選択や確定申告の要否についても、退職前から把握しておくことで、退職後の生活をスムーズに整えることができます。
- 失業保険全体の概要はこちら:定年退職後の失業保険完全ガイド|いつから・いくら・手続きの全手順
- 待機期間の詳細はこちら:定年退職後の失業保険、待機期間はいつから?60歳・65歳別の違いを解説
- 65歳以上の方はこちら:65歳以上の定年退職と失業保険|高年齢求職者給付金との違いを徹底解説
- [→ 退職後の健康保険の選び方(別記事)]
- [→ 退職後の住民税(別記事)]
- 再雇用・定年後の給料に関する実体験はこちら:【体験談】再雇用で給料が半分になった現実と、それでも続けることにした理由

