60歳で定年退職して後悔したこと|失敗パターンと事前対策

「退職したら後悔するかもしれない」と感じながら、定年の日を迎える方は少なくありません。
あるいは、すでに退職を経験して「こうなるとは思わなかった」と感じている方もいるでしょう。
後悔した人には、共通したパターンがあります。
お金・仕事・生活・夫婦関係という4つの軸で整理すると、多くの方が退職前に準備できた点が浮き彫りになります。
早期退職の判断を検討している方は、先に早期退職を考えたらもあわせてご覧ください。
この記事では、定年退職後に後悔する人の割合や実態を明らかにしたうえで、お金・仕事・夫婦・健康という4つの軸から後悔のパターンを整理し、さらに退職前にやっておけばよかったことと具体的な対策までを網羅的に解説します。
定年退職後に後悔・不安を感じる人の割合
「後悔するのは自分だけかもしれない」と感じている方に、まずデータをお伝えしたいと思います。
パーソルキャリア株式会社が運営するJob総研が2024年に606人の社会人男女を対象に行った「定年に関する意識調査」では、全体の80.6%が「定年後に不安あり」、82.3%が「定年後の経済的な不安あり」と回答しています。
定年を前にして何かしら心配を感じている人は、8割以上にのぼるということです。
実際に退職後に後悔や生活の変化に戸惑いを感じる人も、決して少数派ではありません。
内閣府が実施した企業退職経験者を対象とした意識調査(平成9年度)でも、退職後の生活の変化に対して予想との乖離を感じる人の存在が報告されています。
後悔そのものは「失敗した証拠」ではなく、「準備が間に合わなかったサイン」です。
退職前に典型的なパターンを知っておくことで、同じ轍を踏まずに済みます。
お金に関する後悔
定年退職後の後悔として最も多く語られるのが、お金にまつわるものです。
収入が大きく減るとわかっていても、その実感は退職してみるまでなかなかつかめないのが現実です。
退職後の収入減を実感としてつかめていなかった
在職中は毎月決まった給与が振り込まれ、ある程度の生活費は自然に確保されていました。
退職後はその安定した収入が止まり、年金が始まるまでの数年間、無収入または大幅な収入減の状態になる場合があります。
「頭ではわかっていたが、実際に通帳を見て焦った」という声はよく耳にします。
60歳で定年退職した場合、老齢厚生年金の受給開始は原則65歳です。
この空白の5年間をどう乗り越えるかを、退職前に具体的に試算している人は多くありません。
雇用保険の失業給付や継続雇用制度の活用も含め、収入の見通しを早めに立てておく必要があります。
退職金の使い道を決めていなかった
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、大学・大学院卒で勤続20年以上・45歳以上の定年退職者の平均退職給付額は1,896万円です(退職一時金制度のみの企業が対象)。
まとまった金額に見えますが、老後20〜30年分の生活を支える補完資金として考えると、手をつける順番と使い道をあらかじめ決めておかなければ、思わぬ速さで目減りしてしまいます。
退職後の高揚感から「旅行や趣味にまとめて使ってしまった」「詳しくない投資商品に回してしまった」という後悔も少なくありません。
退職金は「老後の収入を補うためのもの」と位置づけて、使い道を退職前から設計しておくことが重要です。
退職金の平均額や目安については、退職金の平均はいくら?で詳しく解説しています。
年金だけでは足りないと気づくのが遅かった
厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金受給者の平均年金月額は約14万5,000円(国民年金分を含む)です。
この金額だけで老後の生活費すべてをまかなうのは、多くの世帯にとって難しい水準といえます。
生活費に加えて、医療費・介護費・住宅のリフォーム費用など、60代以降に増えていく支出もあります。
「年金でなんとかなると思っていたが、現実はそうではなかった」という後悔は、退職後に初めて家計を細かく計算したときに気づくケースが多いです。
ねんきん定期便で自分の受給見込み額を確認し、不足分をどう準備するかを退職前に考えておくことが大切です。

仕事・社会とのつながりに関する後悔
退職後の生活を考えるとき、「仕事がなくなること」のインパクトは経済面だけではありません。
居場所・役割・人とのつながりという面でも、大きな変化が訪れます。
「もう少し働けばよかった」という喪失感
退職直後は「これで自由になれる」と解放感を覚える人が多いです。
ところが数カ月もすると、何もすることがない時間の長さが苦痛に変わってくる場合があります。
毎日の目的や緊張感がなくなり、朝起きても「今日何をするか」が決まらない日が続くと、それが蓄積されてむなしさや焦りになっていきます。
「もう1〜2年働き続けていれば、もう少しやりがいが続いたかもしれない」という後悔は、退職後半年から1年たった頃に出てくることが多いです。
退職のタイミングを決める前に、自分にとっての「仕事のもつ意味」を整理しておくことが大切です。
肩書きがなくなったことへの戸惑い
会社員として長年働いてきた方にとって、「○○会社の△△部長」という肩書きは、社会との接点であり自己紹介の軸でした。
退職後はその肩書きがなくなり、自分が何者かを説明しにくくなる感覚が生まれることがあります。
近所の集まりや地域のイベントに参加しようとしたとき、「元会社員」以外の自己紹介ができないことへの戸惑いを覚える方は少なくありません。
これは心理的なよりどころを失ったサインです。
退職前から趣味や地域活動を通じて「仕事以外の顔」を作っておくと、この感覚はかなり和らぎます。

会社以外のつながりを作っておけばよかった
現役時代の人間関係は、会社を中心に構成されていた方が大半です。
退職後は毎日顔を合わせていた同僚と自然に疎遠になり、気づいたときには連絡を取る相手が急に減っていたというケースが多くあります。
内閣府「令和4年版高齢社会白書」でも、65歳以上のシニアは友人・仲間が多い人ほど生きがいを感じる傾向があることが示されています。
地域コミュニティや趣味のグループ、ボランティア活動など、会社以外の居場所を現役のうちに1つでも作っておくことが、退職後の充実感に大きく影響します。
定年後の仕事の選び方や再就職の方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

夫婦・家庭に関する後悔
定年退職は、夫婦の生活時間のバランスを大きく変えます。
それまで「会社にいる時間」が長かった人ほど、退職後の家庭内での変化は想定以上に大きく感じられます。
妻との関係が想定外に変わった
ハルメクホールディングス株式会社が2024年に実施した「夫婦関係に関する調査」(50〜79歳男女600人対象)では、60代男女の夫婦満足度が2021年比で12〜16ポイント大幅に低下したことがわかりました。
調査では、60代に目立つきっかけとして「退職」と「金銭感覚の違い」が挙げられています。
また、厚生労働省の人口動態統計によると、婚姻期間20年以上の熟年離婚が離婚全体の約23.5%にのぼり、過去最高水準となっています。
「退職後は夫婦でゆっくり過ごせると思っていたが、現実は違った」という声は、決して珍しくありません。
一日中家にいる夫の存在が妻のストレスになる状況については、以下の記事でも詳しく取り上げています。

家事・役割分担を話し合っていなかった
退職後は当然ながら、在宅時間が大幅に増えます。
それまで家事を主に担当していた妻の側からすれば、夫が家にいる時間が増えることで、家事の量が変わらないまま家の中の密度だけが上がる状況になりがちです。
「何を手伝えばいいかわからない」「手伝おうとすると逆に邪魔になる」という声も多く聞かれます。
家事の分担は、退職前に夫婦でオープンに話し合っておくことで、退職後のすれ違いをかなり減らすことができます。
「何を・誰が・どの頻度で担うか」を具体的に決めることがポイントです。
定年後の夫婦の家事分担の考え方については、下記の記事で詳しく解説しています。

健康・生活リズムに関する後悔
仕事がある日は否応なく起きる時間・動く時間が決まっていました。
退職後はその外からの強制がなくなり、生活リズムが意外なほど早く崩れていきます。
生活リズムが崩れた
退職直後は「しばらくゆっくりしよう」と思うものです。
ところが1カ月ほど経つと、昼過ぎまで眠ってしまう日が続いたり、夜更かしが習慣になったりすることがあります。
生活リズムの乱れは、身体の疲れやすさや気分の落ち込みにつながることが知られています。
厚生労働省 e-ヘルスネット「生活習慣と睡眠」でも、規則正しい睡眠・活動リズムが心身の健康維持に重要であることが示されています。
定年退職後は、意識的に起床・就寝・食事の時間を決める工夫が必要です。
運動習慣をもっと早く作ればよかった
現役時代は通勤や職場内の移動など、意識しなくても体を動かす機会がありました。
在宅が増えるとその機会が一気に減り、運動不足が始まります。
「退職後に歩こうと思ったが、体力が落ちていて思ったように動けなかった」という声は多いです。
退職後に突然始めようとするよりも、50代のうちから続けやすい運動習慣を作っておくほうが、体力維持の面でも習慣化のハードルという面でも、はるかに取り組みやすくなります。
ウォーキング・ストレッチ・水泳など、無理なく続けられるものを1つ見つけておくことが大切です。
何をはじめたらよいかわからない方は、スポーツジムに入会してみるのもよいアイディアでしょう。

後悔した人が「退職前にやっておけばよかった」と感じていること
これまでの後悔パターンをふまえると、「退職前にやっておけばよかった」という共通点が見えてきます。
退職の2〜3年前から意識的に取り組むことで、多くの後悔は防ぐことができます。
まず、お金について言えば、退職後の家計シミュレーションを早めに行うことです。
年金受給開始までの空白期間の収支、退職金の使い道の優先順位、毎月の生活費の目安を、夫婦で数字を出しながら確認しておくことが重要です。
「退職後にいくら必要か」についてはいくらあれば辞められる?を参考にしてください。
次に、仕事や社会とのつながりについては、在職中から会社の外に自分の居場所を作っておくことです。
地域のボランティア活動・趣味のサークル・学び直しの場など、会社と無関係のコミュニティに1つでも属しておくと、退職後の孤立感が大きく変わります。
退職の2〜3年前から少しずつ参加し始めると、退職後もスムーズに続けやすくなります。
夫婦関係については、退職後の生活イメージを退職前に話し合っておくことが大切です。
「何時に起きるか」「食事はどうするか」「家事をどう分けるか」という具体的な話を、余裕のあるうちにしておくことで、退職直後の摩擦を減らせます。
健康と生活リズムについては、50代のうちから起床・就寝・食事の時間を一定に保ち、週3日以上の軽い運動を習慣にしておくことが理想です。
退職してからゼロベースで習慣を作るよりも、在職中に作った習慣を継続するほうが、無理なく続けられることは明らかです。
よくある質問
Q. 定年退職して後悔する人はどのくらいいますか?
A. 確定的な「後悔した人の割合」を示す全国調査は限られていますが、パーソルキャリア株式会社Job総研の2024年調査では、社会人男女の80.6%が「定年後に不安あり」と回答しています。
退職後に生活の変化や生きがいの喪失を経験する人は、決して少数派ではありません。
Q. 退職後に後悔しないためにいちばん大切なことは何ですか?
A. 「退職後の生活を具体的にイメージして、退職前から準備を始めること」です。
お金・仕事・人間関係・健康という4つの軸それぞれについて、退職の2〜3年前から少しずつ取り組むことで、退職後の変化をスムーズに受け止めやすくなります。
Q. 退職してから後悔した場合、再就職はできますか?
A. 可能です。
2021年施行の改正高年齢者雇用安定法により、企業には70歳までの就業機会を確保するよう努力義務が課されており、60代の再就職市場は以前より広がっています。
定年後の仕事の選び方については定年後の仕事の選び方で詳しく解説しています。
Q. 妻との関係が退職後に変わるのはよくあることですか?
A. よくあることです。
ハルメクホールディングスの2024年調査では、60代の夫婦満足度が3年前と比べて12〜16ポイント低下しており、60代に特有の変化として「退職」が大きな要因として挙げられています。
退職後の夫婦関係の変化は予測できるだけに、事前の話し合いが効果的です。
Q. 退職前にやっておくべきことは何ですか?
A. 大きく4つあります。
「お金のシミュレーション(収支・退職金の使い道・年金額の確認)」、「会社以外の人間関係の構築」、「夫婦間での退職後の生活ルールの話し合い」、「健康習慣・運動習慣の確立」です。
退職の2〜3年前からこれらを意識的に始めることが、後悔を減らす最善策といえます。
Q. 退職金はどう使うのが正解ですか?
A. 退職金は「老後の生活収入を補うための資金」として位置づけることが基本です。
使い道の優先順位(住宅ローンの返済・生活費の補填・資産運用など)と、手をつけてはいけない金額の下限を退職前に決めておくことが大切です。
詳しくは退職金の平均はいくら?を参考にしてください。
まとめ
60歳で定年退職した後に後悔する人には、お金・仕事・夫婦・健康という4つの軸で共通したパターンがあります。
いずれも退職前には「なんとかなる」と感じながら、具体的な準備をせずに退職の日を迎えてしまったケースです。
後悔の多くは、退職の2〜3年前から意識的に取り組むことで防ぐことができます。
準備した分だけ、退職後の生活は安定しやすくなります。
定年後の選択肢と準備のポイントは、以下の記事でも詳しくまとめています。
