退職金の運用おすすめ方法7選|失敗しない投資先と注意点を解説

本記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。制度・税制等は変更される場合がありますので、最新情報は各公式サイトや金融庁・国税庁等の公的機関でご確認ください。

退職金を受け取ったとき、「とりあえず銀行に預けておこう」と考える方は少なくありません。
しかし、それは安全な選択に見えて、実はリスクを抱えた行動です。

物価が上がり続けるインフレ環境では、銀行の普通預金に置いておくだけで、退職金の実質的な価値は少しずつ目減りしていきます。
総務省の「家計調査(2024年)」によると、65歳以上の夫婦2人無職世帯は毎月約3万4,000円の赤字が生じているとされています。
年金だけでは老後を支えきれない現実を踏まえると、退職金をどう運用するかは人生の大きな課題です。

とはいえ、「退職金を失いたくない」「投資は怖い」という気持ちもよくわかります。
この記事では、50〜60代の方に向けて、安全性と収益性のバランスを取りながら退職金を運用するおすすめ方法7選をわかりやすく解説します。
失敗パターンや年代別の運用割合まで網羅していますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

退職金運用の前に知っておくべき3つの基本

退職金の運用を始める前に、まず土台を整えることが大切です。
何も準備せずに運用を始めると、後悔するケースが非常に多くなります。
以下の3つのポイントをしっかり確認してから動き出しましょう。

運用に回す金額の目安(生活費2年分は現金で残す)

退職金の全額を運用に回してはいけません。
これは退職金運用における最も基本的なルールです。

老後は予期せぬ出費が増えます。
病気や怪我の医療費、自宅のリフォーム代、冠婚葬祭の費用など、突発的にまとまったお金が必要になる場面は少なくありません。
そうした事態に備えて、少なくとも生活費2年分(月25〜30万円とすると600〜720万円程度)は現金のまま普通預金や定期預金に確保しておくことが基本です。

生命保険文化センターの調査によると、ゆとりある老後生活に必要な生活費は月37.9万円とされています。
最低限の生活費の2年分を手元に残し、残りの余裕資金を運用に回すという考え方が、リスクを抑えつつ運用効果を得る基本スタンスです。

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、大学・大学院卒で勤続20年以上かつ45歳以上で定年退職した場合の退職金平均額は約1,896万円です。
仮に1,500万円の退職金を受け取ったとすれば、700〜800万円は現金で確保し、700〜800万円を運用に回すイメージです。

リスク許容度の確認方法

リスク許容度とは、「どれくらいの損失なら精神的・経済的に耐えられるか」という目安です。
投資金額の10%が下がっても平気なのか、5%でも不安になるのか、人によって大きく異なります。

確認するポイントは主に3つです。
まず「運用期間」は何年取れるか。
次に「他の収入」として年金や再雇用の収入がどれくらいあるか。
そして「精神的な耐性」として価格が下がったときにすぐ売りたくなる性格かどうかです。

60代以上は現役時代と比べて損失を挽回する時間が限られているため、安全性を重視した運用割合を高めに設定することが一般的です。
たとえば「元本割れしたら夜も眠れない」という方は、国債や定期預金を中心にした保守的なポートフォリオが向いています。
一方で「10〜20年は使わないお金がある」「ある程度の値動きは許容できる」という方は、インデックス投資信託なども検討できます。

詐欺・ぼったくり商品の見分け方

退職金を受け取った直後は、悪質な業者のターゲットになりやすい時期です。
金融庁も退職者向けの投資詐欺に関して注意喚起を繰り返しています。

怪しい商品・業者に共通するパターンとして、まず「元本保証で高利回り」という謳い文句が挙げられます。
月利5%などの「月利」表示は、年利に換算すると60%以上になり、現実的にありえない数字です。
次に「今だけ限定」「断ったら損」というような急かし系の勧誘も典型的です。
さらに金融庁の登録を受けていない無登録業者による勧誘や、LINEトークルームを使った投資グループへの誘いも詐欺の特徴です。

必ず金融庁の「免許・許可・登録等を受けた業者一覧」で業者登録を確認してから、どんな相談も受けるようにしましょう。
少しでも「おかしいな」と感じたら、その場では絶対に契約しないことが鉄則です。

退職金運用おすすめ7選

ここからは、50〜60代の方に適した運用方法を7つ紹介します。
それぞれのリスク・リターン・メリット・注意点を整理しましたので、ご自身の状況に合わせて組み合わせてご活用ください。

①定期預金(キャンペーン金利活用)

リスク:極めて低い リターン:低〜中(キャンペーン時)

定期預金は元本保証があり、投資経験が少ない方でも安心して利用できる手法です。
特に退職後すぐの「まずは安全に置いておきたい期間」に有効です。

銀行の多くは退職者向けに「退職金専用特別プラン」を用意しており、通常の定期預金よりも高い金利でお金を預けることができます。
たとえば一部の信託銀行では、投資信託とセットで預けることを条件に、3か月物の定期預金に年10%程度の特別金利を設定しているケースもあります。

ただし注意点があります。
この特別金利はあくまで期間限定(3か月〜6か月程度)であることが多く、期間終了後は通常の低金利に戻ります。
また投資信託とのセット購入が条件の場合、その投資信託の手数料・信託報酬が高くなりがちです。
キャンペーン期間後の「出口戦略(次にどう運用するか)」を事前に考えておくことが大切です。

定期預金を活用する際のポイントは、キャンペーン期間中に運用方針を固め、満期になったらすぐに次の運用先に資金を移せるよう準備しておくことです。

②個人向け国債(変動10年)

リスク:非常に低い リターン:低〜やや中

個人向け国債は日本政府が発行する債券で、元本割れがなく安全性が極めて高い金融商品です。
中でも「変動金利型10年満期(変動10年)」は、半年ごとに金利が見直されるため、今後金利が上昇しても対応できるという特徴があります。

財務省の個人向け国債サイトによれば、最低保証金利は年0.05%で、元本は1万円から購入可能です。
発行後1年が経過すれば中途換金もでき(直前2回分の利子が差し引かれます)、流動性もある程度確保されています。

日本国債のデフォルト(返済不能)リスクはゼロではありませんが、他の金融商品と比べれば格段に低いとされています。
「絶対に元本を減らしたくないが、預金よりは少し利回りを上げたい」という方に特に適した選択肢です。

③インデックス投資信託(S&P500・オルカン)

リスク:中程度 リターン:中〜高(長期)

インデックス投資信託とは、株価指数(インデックス)と同じ動きをするよう設計された投資信託のことです。
代表的なものに「S&P500(米国の上位500社に連動)」と「オルカン(全世界株式インデックス)」があり、退職金運用でも近年注目されています。

最大のメリットは信託報酬(運用コスト)の低さです。
ネット証券で購入できるインデックスファンドの信託報酬は年0.1%未満のものも多く、銀行窓口で販売されるアクティブファンドの1〜3%と比べると大幅に低コストです。
長期運用では、このコスト差が最終的なリターンに大きく影響します。

過去の長期データでは、S&P500などの指数は長期的に右肩上がりの傾向がありますが、これは将来の成果を保証するものではありません。
短期的には30〜50%程度の大幅な下落も起こりえます。
したがって、少なくとも10〜15年使わないお金で運用することが前提です。
退職金の一部(全体の20〜30%程度)をインデックスファンドに充て、長期保有するスタンスが現実的でしょう。

NISA口座(後述)を使えば、運用益が非課税になるため、ネット証券でのNISA口座開設と組み合わせるのがおすすめです。
楽天証券をはじめ、SBI証券マネックス証券でも、インデックスファンドのラインアップが充実しており、口座開設も無料でできます。

④iDeCo(60歳以降の節税活用)

リスク:低〜中(商品による) リターン:節税効果含めて高い可能性

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を自分で積み立て・運用する国の制度です。
掛金が全額所得控除になる、運用益が非課税になる、受け取り時にも控除が適用されるという3段階の税制優遇が受けられます。

60歳前後の方にとっては、「これから加入しても遅い」と思われがちですが、そうではありません。
60歳時点でiDeCoに未加入の方は、現在の制度では65歳未満まで加入・掛金拠出が可能です(公的年金に加入している方が対象)。
また2027年1月からは70歳未満まで加入年齢が拡大される予定です(厚生労働省の年金制度改革より)。

ただし、2026年1月1日以降は退職金との受け取りルールが変更になった点に注意が必要です。
これまでiDeCoの一時金を先に受け取り、その5年後以降に退職金を受け取れば、それぞれに退職所得控除を満額適用できました。
しかし2026年1月以降の受け取りからは、この空白期間が「5年」から「10年」に変更されました(いわゆる「10年ルール」)。
受け取り順序や時期によって税負担が大きく変わるため、事前にファイナンシャルプランナー(FP)や税理士に相談することをおすすめします。

楽天証券をはじめ、SBI証券マネックス証券ではiDeCo口座の開設も可能です。
口座管理手数料が低水準のネット証券を活用するとコストを抑えられます。

⑤NISA(非課税枠で長期運用)

リスク:低〜中(商品による) リターン:非課税メリット大

NISA(少額投資非課税制度)は、株式や投資信託で得た運用益や配当が非課税になる国の制度です。
2024年から大幅に制度が拡充され(新NISA)、年間投資上限額が360万円、非課税保有限度額が1,800万円まで拡大されました。

退職金運用の観点では、iDeCoよりも柔軟性が高いことが特徴です。
資金がいつでも引き出せ、60歳以上でも制限なく利用できます。
また口座開設費用や口座管理費用が無料であるため、コストの面でも使いやすい制度です。

退職金の一部をNISA口座に移し、インデックス投資信託に積み立てる方法は、多くの専門家が推奨する組み合わせです。
たとえば、毎月10万円を「つみたて投資枠」でインデックスファンドに投資すれば、年間120万円が非課税で運用できます。

楽天証券をはじめ、SBI証券マネックス証券でNISA口座を開設すると、低コストのインデックスファンドを幅広く選べます。
ネット証券での口座開設は無料で、手続きもオンラインで完結できます。

⑥不動産投資(リスク注意)

リスク:中〜高 リターン:中(インカムゲイン期待)

不動産投資は、マンションや戸建てを購入して賃貸収入(インカムゲイン)を得る方法です。
毎月安定した収入が得られる点が魅力ですが、退職後の運用先として選ぶ際は十分な注意が必要です。

主なリスクとして、空室リスク(入居者がいない期間は収入ゼロ)、家賃下落リスク、修繕費・管理費などのコスト、さらに物件の流動性の低さ(すぐに現金化できない)があります。
また物件購入にあたってローンを組む場合、退職後の収入が少ない状況では返済が重荷になる可能性もあります。

もし不動産投資を検討するなら、ローンを使わずに購入できる範囲の物件を選ぶ、都市部の需要が安定したエリアを選ぶ、信頼できる管理会社に運営を任せるといった点を重視してください。
退職金の大部分を不動産1件に集中させるのは避け、あくまでポートフォリオの一部として位置づけるのが無難です。

⑦ラップ口座(手数料に注意)

リスク:中程度 リターン:中(手数料控除後は要確認)

ラップ口座(ファンドラップ)は、証券会社や銀行と投資一任契約を結び、資産配分から銘柄選択・売買まですべてをプロに任せるサービスです。
投資の手間を省けるため、「自分で商品を選ぶのが難しい」という方に向いています。

ただし、最大の注意点は手数料の高さです。
ラップ口座の手数料は一般的に預け資産の年1〜3%程度かかることが多く、この手数料分だけリターンが押し下げられます。
仮に年間3%の手数料を支払い続けると、長期的に見て運用益の多くが手数料に消えてしまう可能性があります。

ラップ口座を選ぶ場合は、手数料率、投資対象、過去の運用実績を他の選択肢と比較した上で判断してください。
「よくわからないから任せたい」という理由だけで飛びつくのは避け、費用対効果を十分に検討することをおすすめします。

退職金運用で失敗する人の共通パターン3つ

どれだけ良い運用方法を知っていても、行動のミスで失敗する方が多くいます。
よくある失敗パターンを3つ紹介しますので、自分に当てはまらないか確認してみてください。

パターン1:退職直後に全額を高リスク商品に一括投資する

まとまったお金が手元にあると、「一気に増やしたい」という気持ちが高まりがちです。
しかし、退職後は収入が限られており、大損してもリカバリーする時間が少ないという事実があります。
高リスク商品に全額を一括投資した結果、相場が下落して元本割れし、老後の生活設計が狂ってしまうケースは少なくありません。
分散・積立・長期という基本を守ることが、退職金運用の最重要ルールです。

パターン2:銀行窓口で勧められた商品をそのまま購入する

銀行の窓口に相談に行くこと自体は悪いことではありませんが、窓口で提案される商品には注意が必要です。
金融機関は自社で販売手数料が高い商品を優先的に勧める傾向があるため、提案内容が必ずしも顧客にとって最適とは限りません。
窓口で説明を受けた後は、自分でも商品の仕組み・手数料・リスクを調べ、納得してから購入する習慣を持ちましょう。

パターン3:詐欺的な高利回り商品に飛びつく

「月利3%保証」「元本保証で年利10%以上」といった話は、ほぼ詐欺と考えて差し支えありません。
退職者はまとまった資金を持っていることから詐欺師の標的になりやすく、消費者庁金融庁も繰り返し注意喚起しています。
SNSや知人の紹介であっても、根拠不明の高利回りを約束する商品には絶対に手を出さないでください。
金融庁の「金融機関・業者一覧」で登録を確認する習慣を身につけましょう。

50代・60代別おすすめの運用割合

退職金の運用に「正解」はありませんが、年代別におおよその考え方の目安をお伝えします。
あくまでも参考であり、最終的にはご自身の生活費・収入・リスク許容度に合わせて調整してください。

50代後半(定年前)向けの運用割合目安

現役時代の最後に資産形成の仕上げをする時期です。
定年まで数年ある場合は、ある程度リスクを取れます。
目安として、安全資産(定期預金・国債)に40〜50%、成長資産(インデックス投資信託・NISA)に40〜50%、余力資産(不動産・その他)に0〜10%という配分が考えられます。
iDeCoへの加入・増額もこの時期に検討しておくと、節税効果を最大化できます。

60代前半(定年直後)向けの運用割合目安

退職金を受け取る前後の最も重要な時期です。
まず生活費2年分を現金で確保した上で、残りを運用に回します。
安全資産(定期預金・個人向け国債)に50〜60%、成長資産(NISAでのインデックス投資など)に30〜40%、余力資産に0〜10%が一般的なバランスです。
年金受給開始まで数年ある場合は、成長資産の割合を少し高めることも考えられます。

60代後半・70代向けの運用割合目安

年金が受給できるようになったら、生活の基盤は安定します。
ただし「老後は長い」という認識を持ち、全額を預金にしてしまうとインフレへの対応が難しくなります。
安全資産に70%、成長資産(NISA・インデックス)に20〜30%という構成で、緩やかに資産を育てるスタンスが向いています。
ただし70代以降は認知機能の低下も考慮し、複雑な商品は避けてシンプルな運用に絞ることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 退職金は全額運用に回していい?

退職金の全額を運用に回すことはおすすめしません。
生活費2年分(目安600〜700万円程度)は現金で確保した上で、余裕資金を運用に回しましょう。

Q2. 投資未経験でも始められる運用方法はある?

個人向け国債(変動10年)や退職金専用の定期預金は、投資知識がなくても安全に利用できます。
少しリターンを追いたい方は、NISAでのインデックス投資信託(オルカンなど)を少額から積み立てる方法が初心者向きです。

Q3. NISAとiDeCoはどちらを優先すべき?

退職前・60歳未満の方はiDeCo(節税効果が高い)を優先し、並行してNISAも活用するのが理想です。
60歳以降はiDeCoへの新規積立に制限が出てくるため、NISAを中心に運用する方が柔軟性が高くなります。

Q4. 銀行窓口での相談はしないほうがいい?

相談自体は有益ですが、提案商品の手数料や仕組みを必ず自分でも確認しましょう。
窓口は自社商品を優先する傾向があるため、複数の金融機関や独立系FP(ファイナンシャルプランナー)に意見を聞くことをおすすめします。

Q5. 退職金運用で詐欺に遭わないためには?

「元本保証で高利回り」「月利で○%」「今だけ限定」といった勧誘は詐欺の典型です。
金融庁の登録業者一覧で必ず確認し、少しでも不審に思ったらその場で断ることが最大の防衛策です。

まとめ|退職金運用のスタート手順

退職金の運用は、一度始めたら長く付き合っていくものです。
焦らず、順を追って準備を進めることが成功への近道です。

以下の手順でスタートするとスムーズです。

まず「生活費2年分の現金を確保する」ことから始めてください。
これが土台になります。

次に「ご自身のリスク許容度を確認する」ことです。
価格変動に耐えられるかどうかを冷静に見極めましょう。

そして「目的別に資金を分ける」ことが重要です。
すぐに使う可能性があるお金(定期預金・国債)、10〜15年後のために育てるお金(NISA・インデックス)、節税目的の老後資金(iDeCo)というように、用途に合わせて分配します。

最後に「専門家への相談を検討する」ことです。
特に税制面では、iDeCoと退職金の受け取り順序によって手取り額に数百万円の差が生じることもあります。
FP(ファイナンシャルプランナー)への相談サービスとして、マネーフォワードFP相談などの無料・有料相談サービスを活用するのも選択肢のひとつです。

退職金は「一度きりの大切なまとめ資金」です。
焦らず、慎重に、でも「何もしない」ことへのリスクも認識しながら、長く安心できる運用を始めてみてください。

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