年金に税金はかかる?所得税・住民税の仕組みと非課税になる条件を解説

「年金をもらうようになったら、税金はどうなるのだろう」という疑問を持つ方は少なくありません。
老後の生活設計を考えるうえで、手取り額がいくらになるのかは非常に重要なテーマです。

結論から申し上げると、老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)には所得税と住民税がかかります。
ただし、「公的年金等控除」という仕組みがあるため、受け取った年金額の全部に税金がかかるわけではありません。
一定の収入額以下であれば、税負担がゼロになることも十分あります。

さらに、2025年(令和7年)の税制改正により、所得税がかからない年金収入の目安が大幅に引き上げられています。
改正前と比べて非課税の範囲が広がっているため、最新の情報を把握しておくことが大切です。

この記事では、年金に税金がかかる仕組み、非課税になる条件、確定申告の要否まで、順を追って丁寧に解説します。
なお、退職金にかかる税金(退職所得控除・1/2課税)とは別の制度ですので、混同しないようご注意ください。

目次

年金収入にも税金はかかる

老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、税法上「雑所得(ざつしょとく)」として扱われます。
雑所得とは、給与所得・事業所得・不動産所得などに当てはまらない所得のことで、年金もこの区分に含まれます。
雑所得は所得税と住民税の課税対象ですので、年金を受け取っている方にも原則として税金がかかります。

「年金は非課税ではないの?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それは誤解です。
老齢年金は、現役時代に給与をもらっていたときと同じように、一定のルールのもとで課税の対象になります。

ただし、一点大切なことがあります。
「公的年金等控除」という控除の仕組みがあるため、受け取った年金額のすべてに税金がかかるわけではありません。
給与所得に「給与所得控除」が適用されるのと同様、年金にも専用の控除が設けられており、課税される部分を圧縮できます。
この控除の仕組みについては、次の章でくわしく説明します。

なお、遺族年金と障害年金については、老齢年金とは取り扱いが異なります。
これらは原則として所得税も住民税もかかりません。
くわしくは後述しますが、生活保障の性格が強いことから、法律上、非課税とされています。

年金の平均受給額や受給額の計算の仕組みについては、年金の平均受給額や計算の仕組みはこちらで解説していますので、あわせてご参照ください。

公的年金等控除とは|年齢と年金額で控除額が変わる

公的年金等控除とは、年金収入から一定の金額を差し引くことで、課税対象となる所得を圧縮する仕組みです。
現役世代の給与収入に「給与所得控除」が適用されるのと同じように、年金受給者には専用の控除が用意されているわけです。
年金生活者の経済的な安定を税制面から支えるための制度といえます。

この控除の大きな特徴は、受給者の年齢によって控除額が異なる点です。
65歳未満と65歳以上とでは、まったく異なる計算式が適用されます。
65歳以上のほうが控除額が大きく設定されており、高齢になるほど税負担が軽くなる配慮がなされています。

また、年金以外の所得(給与・事業所得など)が年間1,000万円を超える場合には、控除額が縮小される仕組みになっています。
以下の表は、他の所得が1,000万円以下の標準的なケースを前提にしています。

年齢年金収入(合計)控除額の計算
65歳未満130万円以下60万円(定額)
65歳未満130万円超〜410万円以下収入 × 25%+27.5万円
65歳未満410万円超〜770万円以下収入 × 15%+68.5万円
65歳未満770万円超収入 × 5%+145.5万円
65歳以上330万円以下110万円(定額)
65歳以上330万円超〜410万円以下収入 × 25%+27.5万円
65歳以上410万円超〜770万円以下収入 × 15%+68.5万円
65歳以上770万円超収入 × 5%+145.5万円

※他の所得が1,000万円以下の場合。出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」(令和2年分以後)

たとえば、65歳以上で年金収入が年間250万円の方の場合を考えてみましょう。
年金額が330万円以下ですので、控除額は110万円(定額)になります。
250万円から110万円を引いた140万円が「公的年金等に係る雑所得」となります。

ここから、さらに基礎控除や社会保険料控除などの「所得控除」を差し引いたものが「課税所得」です。
この課税所得に所得税率を掛けることで、最終的な税額が決まります。

計算の流れをひとことで表すと、「年金収入 ー 公的年金等控除額 ー 各種所得控除 = 課税所得」となります。
受け取った年金額がそのまま税金の対象になるわけではないことを、まずご理解ください。

年金から税金がかからないケース

公的年金等控除に加えて、すべての納税者に適用される「基礎控除」を組み合わせることで、一定の収入以下であれば所得税がかからなくなります。

2025年(令和7年)税制改正による非課税ラインの大幅な引き上げ

2025年(令和7年)の税制改正で、所得税の基礎控除額が最大95万円(改正前:最大48万円)に引き上げられました。
これにともない、年金収入に対する所得税の非課税ラインも大きく変わっています。

日本年金機構の発表によると、65歳以上の方については、公的年金等控除(110万円)と基礎控除(最大95万円)の合計にあたる 205万円未満 が所得税の非課税の目安となります。
改正前(2024年まで)は158万円以下が目安でしたので、非課税の範囲が約47万円も広がったことになります。
65歳未満の方は 155万円未満 が非課税の目安です(改正前は108万円以下)。

なお、この目安はあくまで年金収入のみで他に収入がない場合を前提としています。
パート収入や不動産収入など他の所得がある場合には、それらを合算して計算しますので、実際の税額は個別の状況によって異なります。

住民税の非課税基準について

住民税にも非課税の基準がありますが、所得税とは計算の仕組みが異なります。
また、自治体によって細かい基準が異なる場合もあるため、住民税が非課税になるかどうかについては、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
住民税が非課税になると介護保険料や医療費の自己負担にも影響が出ることがあるため、確認しておく価値があります。

遺族年金・障害年金は所得税・住民税ともに非課税

老齢年金と異なり、遺族年金と障害年金は所得税も住民税も課税されません。
これは所得税法第9条に定められており、遺族や障害のある方への給付は課税の対象から除かれています。
遺族年金や障害年金のみを受け取っている方は、税金の心配をする必要はありません。

年金受給者の確定申告

年金を受け取っている方でも、確定申告が必要なケースとそうでないケースがあります。
「自分は申告が必要なのだろうか」と判断に迷う方が多いため、整理しておきましょう。

確定申告が必要なケース

まず、公的年金等の収入が年間400万円を超える場合は、確定申告が必要です。
次に、年金以外の収入(給与・不動産収入など)が年間20万円を超える場合も、申告の対象になります。
また、医療費控除やふるさと納税(寄付金控除)などを申請したい場合には、自分から確定申告を行う必要があります。

確定申告が不要なケース(確定申告不要制度)

国税庁が定める「確定申告不要制度」により、公的年金等の収入が年間400万円以下で、かつ年金以外の所得が20万円以下であれば、原則として確定申告は不要です。
多くの年金受給者がこの制度の対象にあてはまり、毎年の申告作業が免除されています。

ただし、注意点が二つあります。
一つは、確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が別途必要になることがあるという点です。
所得税と住民税は別の税目ですので、住民税について市区町村に確認しておくと安心です。

もう一つは、確定申告が不要な場合でも「申告すれば税金が戻る」可能性がある点です。
たとえば、医療費が多くかかった年に医療費控除を申請することで、源泉徴収された所得税の一部が還付されることがあります。
確定申告の手間はかかるものの、払いすぎた税金を取り戻せる機会ですので、該当しそうな年は積極的に確認することをおすすめします。

源泉徴収票の確認も大切

年金の支払者からは、毎年「公的年金等の源泉徴収票」が送付されます。
この票には、受け取った年金額・源泉徴収された所得税額・各種控除の金額などが記載されています。
確定申告を行う際や、自分の税額を確認したいときには、この源泉徴収票が基本資料になります。

自分の年金にいくら税金がかかるか、もっと正確に知りたい方や節税の方法を探している方には、ファイナンシャルプランナー(FP)への無料相談が確実な一手です。
個人の状況に合わせた税額のシミュレーションや、具体的なアドバイスを受けることができます。

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年金から住民税が天引きされる仕組み

所得税と同様に、住民税も年金から天引きされる仕組みがあることをご存じでしょうか。
65歳以上で老齢年金を受給している方は、原則として住民税も年金から「特別徴収(天引き)」されます。

特別徴収とは、住民税を自分で納付書を使って支払うのではなく、年金から自動的に差し引かれる方式のことです。
4月・6月・8月の3回で前年分の住民税を仮徴収し、10月・12月・翌年2月の3回で本徴収を行うという流れが一般的です。
自分の年金からいくら天引きされているかは、年金の振込通知書や毎年送られてくる源泉徴収票で確認できます。

一方、年金額が少ない場合や、老齢年金を受給し始めたばかりの年度には、「普通徴収」(自分で納付)になるケースがあります。
普通徴収では、市区町村から送られてくる納付書を使って住民税を自分で納めることになります。
受給開始後の数年間は納付方法が変わることがあるため、あらかじめ確認しておくと混乱を防げます。

退職後に届く住民税の納付書については、退職後の住民税の仕組みはこちらで詳しく解説しています。

よくある質問

Q1. 厚生年金と国民年金、両方もらっている場合は合算して計算しますか?

はい、合算して計算します。
厚生年金・国民年金など、複数の公的年金を受け取っている場合には、それらをすべて合計した金額を「公的年金等の収入額」として雑所得を算出します。
種別ごとに別々に計算するのではなく、すべて一本にまとめて計算するのが原則です。

Q2. 年金収入が年250万円の場合、所得税はいくらかかりますか?

65歳以上を前提に、2025年(令和7年)改正後の基礎控除(95万円)で計算してみます。
まず、公的年金等控除額は110万円(定額)ですので、250万円から110万円を引いた140万円が雑所得になります。
ここから基礎控除95万円を差し引くと、課税所得は45万円です。
この45万円に所得税率5%を掛けると、約2.3万円が目安の税額になります(他に所得控除がない場合)。
なお、年金収入が205万円未満の方は同様の計算をすると課税所得がゼロとなり、所得税はかかりません。

Q3. 働きながら年金を受け取っている場合はどうなりますか?

給与所得と年金の雑所得を合算して税額を計算することになります。
公的年金等の収入が400万円以下であっても、給与などの他の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
合算後の所得額によっては、それぞれ単独で見るよりも税負担が大きくなることがあるため、事前に試算しておくと安心です。

Q4. iDeCoの受け取りにも税金はかかりますか?

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、受け取り方によって課税の仕組みが変わります。
一時金(一括受け取り)の場合は退職所得として扱われ、退職所得控除の対象になります。
年金形式(分割受け取り)で受け取る場合は、公的年金等の雑所得として合算されます。
くわしくはiDeCoの仕組み・税制優遇はこちらをご参照ください。

Q5. 海外に住んでいても日本の年金に税金はかかりますか?

日本国内に住所がなくなった場合でも、日本の年金には原則として20.42%の税率で源泉徴収が行われます。
ただし、居住国と日本との間に租税条約がある場合には、税率が軽減されたり免除されたりすることがあります。
海外居住中の年金課税については、国税庁や在外公館に事前に確認されることをおすすめします。

まとめ

この記事でお伝えした内容を改めて整理します。

公的年金(老齢年金)は「雑所得」として所得税・住民税の対象になります。
ただし、公的年金等控除があるため、年金収入の全額に課税されるわけではありません。

2025年(令和7年)の税制改正で基礎控除額が引き上げられた結果、65歳以上で年金収入が205万円未満であれば原則として所得税はかかりません。
65歳未満の方は155万円未満が目安です。
改正前と比べて非課税の範囲が大きく広がっていますので、以前の情報をお持ちの方は改めて確認することをおすすめします。

遺族年金・障害年金は所得税・住民税ともに非課税です。
これらを受け取っている方は、課税を心配する必要はありません。

年金収入が400万円以下かつ他の所得が20万円以下であれば、確定申告は原則不要です。
一方、医療費控除などを申告することで税金が還付されるケースもあります。
申告しないと損をする場合がありますので、毎年一度は自分の状況を確認する習慣をつけると安心です。

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