「自分の退職金は多いのか、それとも少ないのか」——定年が近づくにつれ、そう気になり始める方は多いものです。
退職金の相場は企業規模・業種・勤続年数によって大きく異なり、一口に「平均」といっても数百万円から数千万円まで幅があります。
この記事では、厚生労働省や東京都産業労働局の最新データをもとに、企業規模別・勤続年数別・業種別の退職金平均額を整理します。
「自分の退職金が平均と比べてどの水準にあるか」を確認する方法も合わせてお伝えします。
なお退職金の受け取り時期や手続きの詳細については、以下の記事をご参照ください。

退職金の平均額|企業規模別データ
退職金の相場を把握するうえでもっとも重要な変数が、企業規模です。
大企業の退職金額は勤続1年あたり60万円程度、中小企業では勤続1年あたり30万円程度となっており、規模の差が金額に直結しています。
以下、規模別に最新データを確認していきましょう。
大企業(従業員1,000人以上)の平均
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、大卒で勤続35年以上の定年退職者1人平均退職給付額は2,037万円で、前回調査(2018年)の2,173万円から約136万円低下しています。
| 学歴 | 平均退職金額(大企業・定年退職) |
|---|---|
| 大学・大学院卒 | 約2,037万円 |
| 高校卒 | 約1,669万円 |
※厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」(資本金5億円以上・従業員1,000人以上)
中小企業(従業員100〜999人)の平均
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、中小企業の定年退職時のモデル退職金は以下の水準です。
| 学歴 | 平均退職金額(中小企業・定年退職) |
|---|---|
| 大学・大学院卒 | 約1,092万円 |
| 高校卒 | 約994万円 |
※東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」(2024年7月31日時点)
大企業と中小企業では受け取れる退職金額に約2倍の差がついていることがデータから明らかです。
小規模企業(従業員100人未満)の平均
従業員100人未満の小規模企業では、退職金の水準はさらに低くなる傾向があります。
従業員数10〜49人の企業は、100〜299人の企業に比べて7割程度の退職金水準にとどまっており、企業規模が大きくなればなるほど退職金の支給額も増えています。
小規模企業に長年勤めてきた方は、退職金だけに老後資金を頼ることなく、早めに自助努力での備えを整えておくことが重要といえます。
勤続年数別の退職金平均額
退職金の額は、勤続年数が長くなるほど大きく増える傾向があります。
大企業では勤続年数が25年を超えたところで1,000万円の大台に乗りますが、中小企業は数百万円程度に留まっています。
以下に、大企業・中小企業それぞれの勤続年数別モデル退職金(大卒・定年退職)をまとめます。
勤続年数別モデル退職金の目安
| 勤続年数 | 大企業(大卒・会社都合) | 中小企業(大卒・会社都合) |
|---|---|---|
| 20年 | 約959万円 | 約560万円 |
| 25年 | 約1,282万円 | 約745万円 |
| 30年 | 約1,626万円 | 約930万円 |
| 35年 | 約1,874万円 | 約1,009万円 |
| 定年(38年程度) | 約2,140万円 | 約1,092万円 |
※大企業:中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査」
※中小企業:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」
この表から読み取れる重要なポイントが二つあります。
一つ目は、勤続年数が10年増えるごとに退職金が数百万円単位で増加するという右肩上がりの構造です。
二つ目は、勤続35年で自己都合退職したときの退職金は、中小企業が700万円なのに対し、大企業はその2倍以上の1,679万円という企業規模による大きな開きです。
定年まで勤め上げることと、大企業に勤めることの二つが、退職金を最大化するうえで特に重要な要素といえます。
大卒と高卒での違い
勤続年数が同じ場合、学歴が高いほど退職金の相場が増える傾向があります。
また、高卒の定年退職金が高専・短大卒の退職金相場を上回っているのは、高卒で働き始める方が一般的に勤続年数が長いためと考えられます。
大企業の場合、大卒と高卒の定年退職金の差は100〜200万円程度ですが、中小企業では差が縮まる傾向があります。
学歴よりも勤続年数の差の方が退職金額への影響が大きいため、「いつ辞めるか」が「どの学歴か」以上に退職金を左右するといえるでしょう。
業種別の退職金平均額
同じ企業規模でも、業種が違うだけで退職金の水準は数百万円単位で異なります。
業種によって定年時の退職金の金額に100万円単位で差があり、特に「金融業・保険業」と「教育・学習支援業(学校教育を除く)」の金額には約1,000万円もの開きがあることが東京都産業労働局の調査から明らかになっています。
自分の業種の水準を把握しておくことが、退職後の資金計画の精度を上げる第一歩です。
退職金が高い業種
業種別に見ると、高校卒・大学卒ともに「金融業・保険業」の平均退職金額が最も高いという結果が出ています。
製造業は全体的に平均相場が高く、食品・たばこ、化学、窯業・土石製品はそれぞれ1,000万円を超えており、新聞・放送が1,456万7,000円、電力が1,110万4,000円という水準です。
規模の大きい業種や、専門性・危険性の高い職種ほど退職金が手厚い傾向があるといえます。
退職金が低い業種
一方、飲食業・小売業・サービス業は退職金の水準が低くなりやすい傾向があります。
製造業と比べて医療施設や海運・倉庫は低い傾向にあることも確認されています。
こうした業種に長年勤めてきた方は、退職金だけに老後資金を頼らず、iDeCoやNISAなどを活用した自助努力の積み立てを早めに始めることが重要です。
公務員の退職金との比較
公務員の退職金は、民間企業と比較してどの水準にあるのでしょうか。
地方公務員の退職金は約2,100万〜2,200万円で、職員区分による大きな差はありません。
これは大企業の定年退職水準に近い数字であり、公務員の退職金は民間の中小企業と比べると手厚い水準にあるといえます。
ただし近年は官民格差の是正が続いており、以前ほどの優位性は縮まりつつあります。
退職金がない会社の現実
退職金は「どの会社でも当然もらえるもの」だと思っている方が多いですが、実はそうではありません。
この事実を早めに知っておくことが、老後資金の計画を正確に立てる第一歩です。
退職金制度がない企業の割合——約3割
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度(退職一時金または退職年金)がある企業の割合は全体の74.9%です。
退職給付制度がある企業の割合は近年5%ほど減少しており、約4社に1社では退職金制度が存在しないことになります。
特に従業員30人未満の小規模企業では、退職金制度のない会社がさらに多い傾向があります。
「自分の会社に退職金制度があるかどうか」を就業規則で確認したことがない方は、今すぐ確認することをおすすめします。
制度があっても、勤続年数や退職理由によって支給額がゼロになるケースがある点にも注意が必要です。
退職金代わりに何があるか——iDeCo・企業型DC
退職金制度がない会社に勤めている場合や、退職金だけでは老後資金が不足する場合に活用できる制度が二つあります。
一つ目は企業型DC(企業型確定拠出年金)で、企業が掛金を拠出し、従業員が自分で運用する仕組みです。
確定拠出年金には個人型(iDeCo)と企業型を合わせると1,000万人を超える加入者がおり、近年は加入者が急増しています。
二つ目はiDeCo(個人型確定拠出年金)で、自分で掛金を積み立てて運用する制度です。
掛金が全額所得控除の対象になるため、現役時代の節税効果も期待できます。
いずれの制度も、「退職金がない分を自分で積み立てる」という老後資金の自助努力として有効な手段といえるでしょう。
税金が引かれた後の手取り額の目安
退職金は全額が手取りになるわけではありません。
ただし、退職金には「退職所得控除」という手厚い非課税枠が設けられており、長く勤めた人ほど税負担が軽くなる仕組みになっています。
退職所得控除の仕組み——概要のみ
退職所得控除とは、退職金から一定額を差し引いてから税金を計算できる制度です。
勤続年数に応じて控除額が決まり、20年以下の場合は「40万円×勤続年数(最低80万円)」、20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となります。
さらに、控除後の金額を2分の1にしてから税率をかけるという優遇措置もあるため、同じ金額の給与収入と比べると税負担は大幅に軽くなります。
手取り額の簡易計算例
| 勤続年数 | 退職金 | 退職所得控除額 | 税金の目安 | 手取り概算 |
|---|---|---|---|---|
| 20年 | 1,000万円 | 800万円 | 約15万円 | 約985万円 |
| 25年 | 1,500万円 | 1,150万円 | 約27万円 | 約1,473万円 |
| 35年 | 2,000万円 | 1,850万円 | 約23万円 | 約1,977万円 |
※概算。iDeCoとの併受給・役員退職金など特殊な場合は異なります
勤続20年で退職金1,000万円を受け取った場合、税金は所得税が5万1,050円・住民税が10万円の合計約15万円で、手取りは984万8,950円となり、退職金の税負担がいかに軽いかがわかります。
詳しい手続きは確定申告記事へ
通常、退職金にかかる所得税は会社が源泉徴収するため、原則として確定申告は不要です。
ただし医療費控除や寄付金控除を受ける場合など、個別の状況によって確定申告が必要になるケースもあります。
退職後の確定申告の手続きについては「退職後の確定申告は必要?退職金・年金・医療費控除の申告まとめ」をご参照ください。
なお退職金の受け取り時期や手続きの詳細については「退職金はいつもらえる?支払い時期・源泉徴収票・共済別の受け取り方を解説」もあわせてご確認ください。
自分の退職金が平均より多いか少ないか確認する方法
この記事のデータと自分の状況を照らし合わせたとき、「具体的に自分はいくらもらえるのか」を正確に知るには、社内の書類を確認することが不可欠です。
老後の資金計画を正確に立てるためにも、定年前に必ず確認しておきましょう。
就業規則・退職金規程の確認方法
退職金規程には、退職金の支給対象となる条件・金額の計算方法・支払い時期などが記載されており、企業は退職金規程を従業員に開示することが義務付けられています。
社内の共有フォルダやイントラネット、または人事・総務部門に請求すれば閲覧・入手できます。
退職金の計算方法は会社ごとに異なるため、「基本給×勤続年数×退職事由別支給率」という形の計算式を確認し、現在の基本給と勤続年数を当てはめることで、おおよその退職金額が計算できます。
自己都合退職と会社都合退職・定年退職では支給率が大きく異なるケースが多く、定年まで勤め上げた場合の金額と、早期退職した場合の金額の差を事前に把握しておくことが重要です。
会社への確認タイミング——定年5年前が目安
退職金の見込み額を人事部門に直接確認するタイミングは、定年の5年前(55〜57歳頃)が目安です。
この時期であれば、退職金の試算を依頼しても不自然ではなく、「老後の資金計画を立てたい」という理由を添えれば丁寧に対応してもらいやすいものです。
就業規則を読んでも不明な点がある場合や、個別の状況について正確な情報を知りたい場合は、人事部や総務部など、労務管理を担当する部署へ直接問い合わせるのが確実です。
退職金の見込み額が把握できたら、老後の生活費との兼ね合いを確認することが次のステップです。
老後に必要な生活費の目安については「老後の生活費はいくらかかる?知っておきたい基本と全体像」をご参照ください。
退職後の手続きの全体像については「定年退職の手続きチェックリスト完全版」もあわせてご確認ください。
退職金の使い方や老後の資金計画についてFPに相談したい方は、保険見直し本舗やマネーキャリアなどのFP無料相談サービスの活用もおすすめです。
ねんきん定期便と退職金の見込み額を手元に用意して相談すると、より具体的なアドバイスが得られます。
よくある質問
Q. 退職金の平均は大企業と中小企業でどのくらい違いますか?
大学・大学院卒の定年退職者で比較すると、大企業が約2,037万円(厚生労働省調査)、中小企業が約1,092万円(東京都産業労働局調査)と、約2倍の開きがあります。
同じ勤続年数でも、勤める企業の規模によって老後の手元資金が1,000万円近く変わることになります。
Q. 勤続20年で退職した場合、退職金はいくらくらいですか?
大企業の大卒・会社都合退職では約959万円、中小企業では約560万円が目安です。
ただし、自己都合退職の場合はこれより2〜3割程度低くなるケースが多いため、退職金規程の支給率を必ず確認してください。
Q. 退職金がない会社はどのくらいありますか?
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度がない企業は全体の約25%です。
特に従業員30人未満の小規模企業では、退職金制度がないケースがさらに多くなります。
自分の会社に退職金制度があるかどうか、就業規則で確認しておくことをおすすめします。
Q. 退職金には税金がかかりますか?
かかりますが、退職所得控除という手厚い非課税枠があるため、通常の給与収入より税負担は大幅に軽くなります。
勤続35年で退職金2,000万円を受け取った場合、税金の目安は約23万円程度です。
詳しい手続きについては「退職後の確定申告は必要?退職金・年金・医療費控除の申告まとめ」をご参照ください。
Q. 自分の退職金がいくらか、定年前に確認できますか?
確認できます。
就業規則または退職金規程に計算式が記載されており、現在の基本給と勤続年数を当てはめれば試算できます。
人事・総務部門に直接確認を依頼することも可能で、定年5年前(55〜57歳頃)に確認しておくのが老後資金計画の観点から最適なタイミングといえます。
まとめ
退職金の相場は、企業規模・勤続年数・業種によって大きく異なります。
大企業の大卒定年退職者で約2,037万円、中小企業では約1,092万円が目安であり、約2倍の差があります。
また約4社に1社には退職金制度がなく、「退職金は当然もらえる」と思い込んだまま定年を迎えることは危険といえます。
まず就業規則で自社の制度を確認し、退職金の見込み額を把握したうえで、老後の生活費との収支計画を立てることが大切です。
老後の生活費については以下の記事をあわせてご参照ください。

退職後の手続き全体については以下の記事をあわせてご参照ください。


