年金制度改正2025|4つの柱と自分の年金への影響確認方法

「2025年に年金が大きく変わったらしいけれど、自分にはどんな影響があるのだろう」と気になりながら、制度の名称が難しくて読み進める気になれない、という方は少なくないでしょう。
今回の改正は、すでに年金を受け取りながら働いている方から、まだ受給前の50代の方、パートや短時間で働いている方まで、幅広い世代の家計に深く関わる内容です。

この記事では、2025年年金制度改正の4つの柱である「在職老齢年金の見直し」「基礎年金の底上げ」「厚生年金の適用拡大」「標準報酬月額の上限引き上げ」の概要と、改正が自分の年金にどう影響するかを確認する方法を、できるだけ平易にお伝えします。

制度・数値は2026年5月時点の情報に基づきます。
最新情報は日本年金機構の公式ページでご確認ください。

目次

2025年年金制度改正とは

今回の改正の正式名称は「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」です。
厚生労働省によると、この法律は2025年6月13日に国会で成立し、主要部分は2026年4月1日から施行されています。
一部の項目については、2027年以降にかけて段階的に施行される予定です。

改正の背景には、3つの社会的な課題があります。
一つ目は少子高齢化の進展です。
年金を支える現役世代の数が年々減り続けるなか、制度の持続可能性を高めるための見直しが急務となっていました。
二つ目は現役世代の負担感への対応です。
現役世代が制度に不公平さを感じないよう、一定以上の収入がある高齢者にも応分の負担を求める方向で整備が進められました。
三つ目は高齢者の就労促進です。
平均寿命・健康寿命が延びるなか、意欲のある高齢者が年齢や働き方にかかわらず活躍しやすい仕組みをつくる狙いがあります。

今回の改正は、すでに年金を受け取りながら働いている「働く高齢者」と、これから年金を受け取る「将来世代」の両方に影響します。
改正の4本柱は、①在職老齢年金の見直し、②基礎年金の底上げ、③厚生年金の適用拡大、④標準報酬月額の上限引き上げです。
次章から、それぞれの内容を順番に確認していきましょう。

在職老齢年金の見直し:基準額が月65万円に引き上げ

在職老齢年金とは、年金を受け取りながら働く高齢者について、賃金(賞与含む月換算額)と老齢厚生年金の合計が一定の「基準額」を超えると、超えた分の半額が年金から差し引かれる仕組みです。
「働いたら年金が削られる」と感じ、就労時間を意図的に抑える高齢者が多いことが長年の課題とされていました。

2026年4月から、この支給停止基準額が2025年度の51万円から65万円に引き上げられます。
厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」では、法律で定められた62万円(2025年6月時点の価格)を物価・賃金の変動に応じて改定した結果、2026年4月からの実際の適用額は65万円になると明示されています。
この改正によって、新たに約20万人が老齢厚生年金を全額受給できるようになる見込みです。

仕組みの詳しい説明・計算方法・働き方ごとの影響については、在職老齢年金の見直し 2026年4月改正の詳細はこちらをご覧ください。

基礎年金の底上げ:将来受け取れる年金が増える

「マクロ経済スライド」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
これは、物価や賃金が上昇しても、それに合わせて年金額を増やしすぎないよう、意図的に年金の伸びを抑える仕組みのことです。
年金財政のバランスを保つための調整措置として導入されていますが、この調整期間が長引くほど、将来の基礎年金の給付水準が下がってしまう懸念がありました。

日本の年金は大きく「基礎年金(1階部分)」と「厚生年金の報酬比例部分(2階部分)」に分かれています。
これまでは両者のマクロ経済スライドによる調整期間に差があり、基礎年金の調整が長引きやすい構造になっていました。
今回の改正では、厚生労働省が示す次回財政検証(2029年予定)において、基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、厚生年金と基礎年金のマクロ経済スライド調整期間を統一させる措置を法律の附則として盛り込みました。
厚生年金の調整を早期に終わらせることで生まれた財源を基礎年金に回し、将来の給付水準の底上げを図る考え方です。

この改正で特に恩恵が大きいと言われているのが、国民年金の加入期間が長い自営業者や専業主婦(夫)の方です。
厚生年金の上乗せ部分が少なく、老後の収入の大半を基礎年金に頼っている方ほど、底上げ効果が家計に直結します。

ただし、今回の措置はあくまで将来の給付水準を守るための安全装置です。
「今すぐ年金額が増える」という性質のものではなく、2029年の財政検証の結果を踏まえて具体的な措置が検討されることになっています。
「将来の年金が大幅に減らされるリスクが抑えられた」という理解が正確です。

厚生年金の適用拡大:パート・短時間労働者にも広がる

従来の厚生年金には「従業員51人以上の企業で、週20時間以上かつ月収8万8,000円以上」という加入条件があり、多くのパートや短時間労働者が対象外となっていました。
いわゆる「106万円の壁」として知られる月収8.8万円(年収換算で約106万円)の要件が、働き方の選択に影響を与えてきた側面があります。

今回の改正では、この月収要件が最低賃金の引き上げ状況を見極めたうえで3年以内に撤廃され、週20時間以上働いていれば原則として厚生年金に加入できる仕組みに変わります。
また、厚生労働省によると、企業規模要件についても段階的に撤廃が進む予定で、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上と対象が拡大し、2035年10月には規模の制限が完全になくなる見通しです。

この適用拡大には、二面性があります。
メリットとしては、将来受け取れる年金額が増えることが挙げられます。
厚生年金に加入することで基礎年金だけでなく報酬比例部分の年金も積み上がるため、老後の収入が手厚くなる可能性があります。
また、健康保険についても会社が保険料の半分を負担してくれるようになります。

一方で注意が必要な点もあります。
新たに厚生年金・健康保険の保険料が給与から差し引かれるため、当面の手取り収入が減る可能性があります。
「将来の年金が増える」と「今の手取りが減る」のどちらが自分にとって大きいかは、年齢・勤務状況・家計によって異なります。
自分の働き方に照らした試算は、次の章で紹介する確認方法を使って具体的に調べることをお勧めします。

正確な施行時期・適用条件については、日本年金機構および厚生労働省の公式情報を必ずご参照ください。

そのほかの主な改正ポイント

今回の改正には、4本柱のほかにも暮らしに関わる変更があります。

育児期間中の年金額への配慮

育児休業中だけでなく、育児のために労働時間を短縮している期間についても、年金額が不利にならないよう配慮する措置が盛り込まれました。
時短勤務を選んだことで将来の年金が減ってしまうという問題意識が背景にあり、子育てと仕事を両立しやすい環境を整備する狙いがあります。
育児中の方や、これから出産・育休を検討している方にとっても、将来の年金設計に関わる重要な変更です。

高所得者の標準報酬月額の上限引き上げ

「標準報酬月額」とは、健康保険や厚生年金の保険料・年金額を計算する際に用いられる、月収を一定の幅で区分したものです。
厚生年金保険の現行上限は月65万円(※在職老齢年金の新基準額と同じ金額ですが、別の制度です)ですが、今後は2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円と段階的に引き上げられます。
月収が現在の上限を超えている高所得者は保険料の負担が増える一方、将来の年金受給額も増える可能性があります。
高所得層からの拠出増が年金財政の安定にもつながるという意味では、制度全体を支える改正でもあります。

改正が自分にどう影響するか確認する方法

制度の概要を理解したとしても、「では自分の年金はいくらになるのか」という具体的な疑問はなかなか解消されません。
ここでは、自分のケースを確認するための3つのルートを紹介します。

① ねんきんネットでシミュレーションする

日本年金機構の「ねんきんネット」では、これまでの保険料の納付状況をもとに、将来の年金見込み額を無料でシミュレーションできます。
加入記録の確認や受給時期を変えた場合の試算もできるため、老後のプランを立てる際に非常に役立つツールです。
ねんきんネットで受給見込み額を確認したうえで、年金はいくらもらえる?受給額の目安と確認方法も参考にすると、老後の収入をより具体的にイメージできるでしょう。

② ねんきん定期便で現状を把握する

毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」には、これまでの年金加入状況が記載されています。
50歳以上の方には、現在の働き方を継続した場合の年金見込み額も記載されているため、老後設計の出発点として活用できます。
届いた封筒を開けずに置いてある方は、ぜひこの機会に確認してみましょう。

③ 年金事務所で個別相談を受ける

在職老齢年金の試算や、個人の加入状況に関する細かな疑問は、全国の年金事務所に予約のうえ相談するのがもっとも確実です。
特に「すでに年金を受け取りながら働いている」「自営業から会社員になった経歴がある」「転職が多い」といった複雑なケースでは、窓口での個別対応が安心です。

制度がどう変わったかを知るだけでは不十分で、自分のケースに当てはめて確認して初めて意味をもちます。
もし一人では判断が難しいと感じた場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)への無料相談を活用することも一つの選択肢です。

まとめ

2025年に成立した年金制度改正の4本柱を振り返ります。

  • 在職老齢年金の見直し:支給停止基準額が2026年4月から65万円に引き上げられ、新たに約20万人が全額受給できるようになる見込み
  • 基礎年金の底上げ:2029年の財政検証で給付水準の低下が見込まれる場合に、マクロ経済スライドの調整期間を統一させる措置が設けられた
  • 厚生年金の適用拡大:月収要件が撤廃され、企業規模要件も2035年10月までに段階的に撤廃される方向
  • 標準報酬月額の上限引き上げ:2027年〜2029年にかけて現行65万円から75万円へ段階的に拡大

制度は変わっても、大切なのは自分のケースで影響を確認することです。
ねんきんネット・ねんきん定期便・年金事務所の3つのルートを活用して、老後の見通しを具体的に立てていきましょう。

関連記事:在職老齢年金の見直し 2026年4月改正の詳細はこちら
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