高額療養費制度の申請方法|退職後の手続きと限度額をわかりやすく解説

医療費が1か月で一定額を超えると払い戻しが受けられる「高額療養費制度」。
知らないと損する申請手順と上限額を年収別に解説します。

「入院したら医療費が想像以上に高くて困っている」「退職後に大きな手術が必要になった」——そんなとき、必ず知っておきたいのが高額療養費制度です。
この制度を使えば、自己負担額が一定の上限を超えた分は後から戻ってきます。
ただし、申請しないと1円も戻りません
ここでは、退職前後の方を含め、申請の仕方・いくら戻るか・必要な書類を順を追ってわかりやすくご説明します。

本記事は2026年4月時点の情報に基づいています。
2026年8月以降、限度額の見直しが予定されています。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認ください。


目次

高額療養費制度とは?基本のしくみ

高額療養費制度とは、1か月(1日〜月末)の間に支払った医療費の自己負担額が「自己負担限度額」を超えた場合に、その超えた分が後から払い戻される制度です。
日本の公的医療保険に加入しているすべての人が対象となるため、会社員・退職者・自営業者・後期高齢者を問わず利用できます。

たとえば年収500万円の方(70歳未満)が入院して医療費の自己負担が20万円になったとします。
この場合、自己負担限度額(後述)はおよそ87,430円となるため、差額の約11万2,000円が後日払い戻されます。
高い医療費がかかったときでも、実際のお財布への影響をぐっと抑えられるのが、この制度の最大のメリットです。

ただし、次の費用は対象外です。
入院中の食事代(食事療養費)・差額ベッド代(個室料)・健康保険が適用されない自由診療・先進医療の技術料などは、いくら高額になっても高額療養費としては戻ってきません。
この点はよくある勘違いなので、注意してください。

自己負担限度額の計算式

自己負担限度額は「年齢」と「所得区分」によって変わります。
70歳未満の一般的な所得層(年収約370〜770万円)を例にとると、計算式は以下のとおりです。

自己負担限度額 = 80,100円 +(総医療費 - 267,000円)× 1%

総医療費が100万円の場合、計算は「80,100円 +(1,000,000円 – 267,000円)× 1% = 87,430円」となります。
窓口で支払った3割負担(30万円)からこの87,430円を引いた約21万2,000円が払い戻されるイメージです。

また、同じ月に複数の医療機関を受診した場合や、同じ世帯で家族が複数受診した場合は「世帯合算」が可能です。
70歳未満の方は、各医療機関での自己負担が21,000円以上のものを合算できます。
70歳以上の方は、金額に関係なくすべての自己負担額を合算できます。

さらに、1年間(直近12か月)のうちに3回以上高額療養費の支給を受けた場合、4か月目からは「多数回該当」として限度額がさらに下がります。
長期の治療や入院が続く方にとって、大きな救済措置となっています。

年収・年齢別の限度額一覧表(現役並み・一般・低所得者)

▼ 70歳未満の自己負担限度額(現行・2026年7月末まで)

所得区分目安の年収自己負担限度額(月額)多数回該当
区分ア約1,160万円以上252,600円+(医療費-842,000円)×1%140,100円
区分イ約770〜1,160万円167,400円+(医療費-558,000円)×1%93,000円
区分ウ約370〜770万円80,100円+(医療費-267,000円)×1%44,400円
区分エ約370万円以下57,600円44,400円
区分オ住民税非課税35,400円24,600円

▼ 70歳以上の自己負担限度額(現行・2026年7月末まで)

所得区分目安の年収外来(個人)限度額世帯の上限額(月額)多数回該当
現役並みⅢ約690万円以上252,600円+(医療費-842,000円)×1%140,100円
現役並みⅡ約530〜690万円167,400円+(医療費-558,000円)×1%93,000円
現役並みⅠ約370〜530万円80,100円+(医療費-267,000円)×1%44,400円
一般約156〜370万円18,000円(年間14.4万円上限)57,600円44,400円
住民税非課税Ⅱ8,000円24,600円
住民税非課税Ⅰ所得ゼロ8,000円15,000円

出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(令和6年8月診療分〜)

2026年8月以降の見直しについて
厚生労働省は2026年8月以降、高額療養費の自己負担限度額を段階的に引き上げる方針を示しています。
現在加入している保険や治療期間によって影響が変わるため、最新情報は厚生労働省の公式案内ページでご確認ください。

高額療養費の申請方法(保険別)

高額療養費は「どの医療保険に加入しているか」によって、申請先と手続き方法が違います。
退職のタイミングによって保険の種類が変わることもあるので、まず自分がどの保険に入っているかを確認するところから始めましょう。

健康保険(会社員・退職後任意継続)の場合

現役で会社員の方、または退職後に「任意継続被保険者」として元の健康保険を継続している方は、加入している健康保険組合または協会けんぽに申請します。

協会けんぽに加入している場合は、協会けんぽ公式サイトから「高額療養費支給申請書」をダウンロードし、必要事項を記入のうえ、お住まいの都道府県支部に郵送または窓口で提出します。

健康保険組合(組合健保)に加入している場合は、会社の総務部・人事部を通じるか、直接健保組合の事務局に問い合わせてください。
手続き方法は健保組合によって異なります。

なお、退職後に任意継続を選んだ場合でも、申請先は退職前と同じ健保組合(または協会けんぽ)です。
退職後2年間は任意継続できますので、医療費が高くなるような治療を控えている方は、加入期間中にしっかり申請しておきましょう。

国民健康保険の場合

退職後に会社の健康保険を脱退し、国民健康保険に加入した方は、お住まいの市区町村の国保担当窓口(市役所・区役所・町役場)に申請します。

申請書は市区町村の窓口でもらうか、各自治体のホームページからダウンロードできる場合があります。
申請期限は「診療を受けた翌月1日から2年間」です。
うっかり申請を忘れたまま時間が経つと権利が消滅してしまうので、高額な医療費が発生したらできるだけ早めに手続きしましょう。

退職直後は国保への切り替え手続きで手が一杯になりがちですが、高額療養費の申請も忘れずに同時進行で進めてください。

後期高齢者医療制度の場合

75歳以上の方(または65歳以上で一定の障害認定を受けた方)は「後期高齢者医療制度」に加入します。
申請先はお住まいの都道府県の後期高齢者医療広域連合ですが、窓口は市区町村の担当課が代行していることがほとんどです。

後期高齢者医療制度では、外来(通院)専用の上限額が別途設定されており、特に一般区分(住民税課税・現役並み所得者以外)の方は月18,000円(年間14.4万円上限)という低い限度額が適用されます。
入院・外来を問わず、医療費が高くなったときはすぐに窓口に相談するようにしましょう。

申請に必要な書類と手順(ステップ形式)

実際の申請の流れを、ステップごとに確認していきましょう。

ステップ1:医療費の領収書を保管する
退院後や受診後に受け取る領収書は、必ずすべて保管してください。
申請の際に添付を求められることがあります。

ステップ2:加入している保険を確認する
健康保険証(またはマイナンバーカード)を見て、加入先を確認します。
「全国健康保険協会(協会けんぽ)」「○○健康保険組合」「国民健康保険」「後期高齢者医療」のいずれかが記載されています。

ステップ3:申請書を入手する
加入先の窓口・ホームページで「高額療養費支給申請書」を入手します。
書類の名称は保険者によって若干異なる場合があります。

ステップ4:必要事項を記入して提出する
申請書に氏名・生年月日・加入者番号・医療機関名・受診月などを記入し、必要書類とともに提出します。
一般的に必要な書類は次のとおりです。
①高額療養費支給申請書、②医療費の領収書(求められる場合)、③健康保険証の写し、④振込先口座がわかるもの(通帳など)、⑤本人確認書類(マイナンバーカード等)。

ステップ5:入金を確認する
申請後、通常は2〜3か月程度で指定の口座に払い戻し金が振り込まれます。
健康保険組合によっては自動的に支給されるケースもありますが、国民健康保険は原則として自分で申請しないと戻ってきません。

限度額適用認定証の使い方(窓口での支払い軽減)

高額療養費は本来「後払い(申請後に払い戻し)」ですが、入院前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払い自体を最初から上限額までに抑えることができます。
いったん高額を立て替えて後日戻るのを待つより、手元のお金への影響がずっと少なくなります。

取得方法は、加入している医療保険の窓口に「限度額適用認定証交付申請書」を提出するだけです。
通常、申請から1〜2週間程度で手元に届きます。
入院が決まったら、できるだけ早めに申請しておくと安心です。

70歳以上の方で「現役並みⅠ・Ⅱ」に該当する場合も、限度額適用認定証が必要になります。
一方で、「現役並みⅢ」や「一般区分」の70歳以上の方は、高齢受給者証と健康保険証を窓口に提示するだけで自動的に上限額が適用されます。

なお、マイナンバーカードを保険証として利用(マイナ保険証)している方は、事前の申請なしに限度額適用が受けられます
手続きの手間が省けるうえ、うっかり申請を忘れるリスクもなくなるため、まだ切り替えていない方はこの機会に検討してみてください。

高額療養費が使える・使えないケースの違い

高額療養費はとても便利な制度ですが、すべての医療費が対象になるわけではありません。
使えるケースと使えないケースを整理しておきましょう。

使えるケース(払い戻し対象)

健康保険が適用される治療であれば、基本的に高額療養費の対象になります。
入院・外来ともに対象で、処方薬(院外処方の薬局での支払いも含む)、訪問診療・訪問看護なども含まれます。
がんや心臓病の手術、骨折による入院、慢性疾患の長期治療なども対象です。

使えないケース(払い戻し対象外)

一方で、次のものは高額療養費の対象外です。
①入院中の食事代(食事療養費)、②差額ベッド代(個室・2人部屋などの室料加算)、③保険適用外の自由診療(美容整形など)、④先進医療の技術料、⑤健診・予防接種(保険外)、⑥通院のための交通費。

差額ベッド代は特に見落としがちです。
入院時に「4人部屋が空いていない」と言われて個室に入った場合でも、自らの希望ではないなら差額ベッド代を支払う義務はない場合もありますので、納得できない場合は病院の相談窓口に相談してみてください。

よくある質問(FAQ)5問

Q1. 退職後すぐに高額医療が必要になりました。どの保険で申請しますか?

退職後の医療費申請先は、その時点で加入している保険です。
退職後に任意継続を選んだ場合は元の健保組合・協会けんぽ、国保に切り替えた場合は市区町村窓口になります。
退職月の医療費は、月末時点で加入していた保険が適用されることが多いですが、退職日によって扱いが異なる場合もあるため、不明な場合は加入保険に問い合わせましょう。

Q2. 申請する前に亡くなった場合、遺族は申請できますか?

はい、できます。
高額療養費は相続財産の一つと見なされるため、相続人が申請することが可能です。
ただし、申請期限(診療翌月1日から2年)がありますので、早めに手続きしてください。

Q3. 同じ月に入院と外来が重なった場合、合算できますか?

合算できます。
70歳未満の場合は、同一月内の各医療機関での自己負担が21,000円以上のものを合算して判定します。
70歳以上の方は金額に関係なくすべての自己負担を合算できます。

Q4. 「多数回該当」とは何ですか?いつから適用されますか?

直近12か月間に、高額療養費が3回以上支給された場合、4か月目から限度額がさらに低くなる仕組みです。
たとえば区分ウ(年収370〜770万円)の方は、通常月57,600〜87,430円のところが多数回該当で44,400円まで下がります。
長期入院や継続的な治療を受けている方には大きなメリットがあります。

Q5. 会社を辞めた後、在職中の高額療養費はさかのぼって申請できますか?

在職中の診療分については、退職後であっても当時加入していた健保組合・協会けんぽに申請できます。
ただし申請期限は「診療翌月1日から2年以内」です。
過去の分も対象になる可能性があるため、領収書が残っているなら確認してみる価値があります。

まとめ|申請の流れチェックリスト

高額療養費制度は、知っているだけで何万円・何十万円単位の差が生まれる制度です。
退職前後は医療費が増えやすい時期でもあります。
ぜひこのチェックリストを活用して、申請漏れのないようにしてください。

申請前の確認チェックリスト

  • 今月の医療費が自己負担限度額を超えそうかどうか確認した
  • 現在加入している保険の種類(協会けんぽ・健保組合・国保・後期高齢者)を確認した
  • 入院予定がある場合は「限度額適用認定証」を事前取得した
  • 領収書をすべて保管している
  • 同月内に家族も受診している場合、世帯合算の可否を確認した

申請時のチェックリスト

  • 申請書を入手し、必要事項を記入した
  • 領収書・健康保険証のコピー・振込先口座を準備した
  • 申請期限(診療翌月から2年)を超えていないか確認した
  • 提出先(窓口/郵送)を確認した

この制度を上手に使えば、高額な医療費も乗り越えやすくなります。
ただし、高額療養費は「健康保険適用内」の自己負担を減らすものであり、差額ベッド代・先進医療費・収入の減少などには対応していません。
入院が長引いた場合の収入減少や、保険外診療が必要になるケースへの備えとして、民間の医療保険・がん保険も選択肢の一つです。

「高額療養費を使っても、念のため備えておきたい」という方は、一度保険の見直しを検討してみるのもよいでしょう。
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