【2026年版】老後の生活費の内訳は?費目別の平均額と自分の家計の見直し方

老後の生活費の内訳を知ると、漠然とした不安が少し具体的な「数字」に変わります。
「毎月どの費目にどれくらいかかるのか」が分かれば、自分の家計と照らし合わせながら、現実に即した備えを考えられるはずです。

この記事では、2026年2月に公表された総務省の最新統計(2025年平均)をもとに、65歳以上の無職世帯における生活費の費目別内訳を丁寧に読み解いていきます。
平均額を「自分ごと」として捉えるためのヒントも費目ごとに紹介するので、ご自身の家計と見比べながら読んでみてください。

目次

老後の生活費、費目別内訳の全体像

老後の生活費がどの費目に、どのくらいの割合で使われているのかを把握することは、家計設計の第一歩です。
総務省統計局の「家計調査」2025年(令和7年)平均によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は月平均26万3,979円(約26万4,000円)でした。
同じく、65歳以上の単身無職世帯では月平均14万8,445円(約14万8,000円)という結果が出ています。

この消費支出は、食料・住居・光熱・水道・家具・家事用品・被服及び履物・保健医療・交通・通信・教育・教養娯楽・その他の消費支出という10の費目に分けて集計されています。

夫婦世帯で最も金額が大きいのは食料で、交際費などを含む「その他の消費支出」を除くと、交通・通信、教養娯楽、光熱・水道の順に続きます。
現役世代と比べて保健医療費の割合が高くなる点も、老後の家計を考えるうえで見逃せない特徴のひとつです。

夫婦世帯の主な費目(月平均/消費支出に占める割合)

  • 食料:7万8,964円(29.9%)
  • 交通・通信:3万1,325円(11.9%)
  • 教養娯楽:2万6,538円(10.1%)
  • 光熱・水道:2万3,540円(8.9%)
  • 交際費:2万3,257円(8.8%)※「その他の消費支出」の一部
  • 保健医療:1万7,941円(6.8%)
  • 住居:1万7,739円(6.7%)

この数字はあくまで全国平均であり、住んでいる地域や住居の形態、健康状態、趣味・嗜好によって実際の金額は大きく異なります。
夫婦2人世帯の収入と支出のバランスについては、「老後の生活費(夫婦2人)」の記事で詳しく解説しています。内訳の全体像を押さえたうえで、次の章からは費目ごとに詳しく見ていきましょう。

食費――消費支出でもっとも大きな費目

老後の生活費の内訳で、金額として最も大きな割合を占めるのが食料費です。

総務省統計局の家計調査(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の食料費は月平均7万8,964円(約7万9,000円)で、消費支出全体のおよそ30%を占めています。

単身世帯では月平均4万2,545円(約4万3,000円)と夫婦世帯の半分強の水準ですが、消費支出に占める割合は28.7%で、夫婦世帯と大きくは変わりません。

食費が高水準を保ちやすい理由のひとつは、老後の「食」のあり方が現役時代と変化することにあります。

現役時代は社員食堂や外食の機会が仕事とセットになっていた方も多いですが、退職後は食事の場が自宅中心になるのが一般的です。
一方で、体力や気力の変化から「毎日一から自炊する」ことが難しくなるケースもあり、調理済み食品や惣菜、デリバリーを活用する機会が増えることも少なくありません。こうした「中食」の利用が増えると、食材費そのものは抑えられても、食費全体としてはそれほど下がらないという状況が生まれます。

食費は毎日の積み重ねであるだけに、「少し意識するだけで変わりやすい費目」でもあります。

近年は米をはじめとする食料品の値上がりが続き、物価の影響を受けやすい費目である点も押さえておきたいところです。旬の食材を活用する、まとめ買いをするといった工夫は、老後の家計を安定させるうえで手の届きやすい対策のひとつと言えるでしょう。

住居費――最も個人差が出やすい費目

住居費は、老後の生活費の内訳のなかで、世帯によって金額の開きが最も大きくなる費目です。

家計調査(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の住居費は月平均1万7,739円(約1万8,000円)、単身無職世帯では1万1,416円(約1万1,000円)という数字が出ています。
この数値を見て「住居費はそれほど高くない」と感じる方も多いかもしれませんが、実はここには大きな前提があります。

65歳以上の無職世帯は持ち家に住む割合が高く、住宅ローンを払い終えた世帯が多数派です。
そのため統計上の住居費は、水回りの修繕や設備交換といった維持管理費が中心で、家賃を払っている世帯の負担は平均の中に薄まって表れています。

なお、住宅ローンの返済は家計調査では消費支出に含まれず、この住居費には入っていない点にも注意しましょう。賃貸住宅に住んでいる方の場合は、実際の住居費がこの平均値を大幅に上回ることになり、地域や間取りによっては月5万〜10万円を超えるケースも珍しくありません。

また、持ち家であっても、築年数が経過すると外壁や屋根の修繕、給湯器の交換など、まとまった費用が必要になる局面が訪れます。こうした一時的な支出はあらかじめ見込んでおく必要があり、毎月の生活費の「外」で備えておくことが家計を安定させるポイントのひとつです。

持ち家か賃貸かで老後の生活費設計がどう変わるかは、「持ち家の老後の生活費」の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

水道光熱費・交通通信費――在宅時間が増えると変わる固定費

水道光熱費と交通通信費は、老後の生活費の内訳のなかで「固定費」として毎月一定額がかかり続ける費目です。

家計調査(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の水道光熱費(光熱・水道)は月平均2万3,540円(約2万4,000円)、単身無職世帯でも1万5,565円(約1万6,000円)となっています。
交通通信費は夫婦世帯で月平均3万1,325円(約3万1,000円)と、「その他の消費支出」を除けば食料費に次ぐ大きさで、内訳の中でも比重の大きな費目のひとつです。

水道光熱費が意外と高くなる背景には、退職後の生活リズムの変化があります。
現役時代は日中の大半を職場で過ごしていたのに対し、退職後は在宅時間が大幅に増えるからです。
その結果、エアコンや照明の使用時間が長くなり、電気・ガスの使用量も自然と増えていきます。
特に夏の冷房と冬の暖房は、健康管理の観点からも節約しすぎることが難しく、季節によって月の光熱費が大きく変動する点も頭に入れておきたいところです。
基本料金を1人で負担する単身世帯では、水道光熱費が消費支出の10.5%を占め、夫婦世帯(8.9%)よりも比重が高くなっています。

交通通信費については、スマートフォンの月額料金やインターネット回線の費用が大きな割合を占めています。
退職によって通勤定期代はなくなる一方、通院や買い物などの外出で交通費がかかる場面は残るため、現役時代とさほど変わらない水準で推移することも少なくありません。
携帯電話の料金プランや自動車の維持費を見直すことは、固定費を抑えるうえで効果的な対策のひとつです。

保健医療費――年齢とともに確実に増える費目

老後の生活費の内訳のなかで、保健医療費は「今は少なくても、年齢が上がるほど増える」という変化のカーブが急な費目のひとつです。
家計調査(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の保健医療費は月平均1万7,941円(約1万8,000円)で、消費支出全体の約7%を占めています。単身無職世帯では月8,388円(約8,000円)という数字が示されていますが、これはあくまで65歳以上全体の平均であり、70代・80代と年齢が上がるにつれて金額が大きく変わっていきます。

ニッセイ基礎研究所の分析によると、65〜69歳と75〜79歳を比較すると、医療費はおよそ1.6倍に膨らむという傾向が確認されています。
厚生労働省の国民医療費データでも、65歳以上の一人当たり医療費は65歳未満の約3〜4倍に及ぶことが示されており、高齢期に入ってからの医療費の重さは、現役時代のそれとは性質が異なります。

保健医療費に含まれるのは、病院での窓口自己負担分や処方薬の費用、健康診断・人間ドック費用、市販薬・サプリメント代などです。
なお、健康保険や介護保険の保険料は「非消費支出」の社会保険料として扱われるため、この保健医療費には入っていません。
持病の通院が定期的に続く場合は固定費に近い形で毎月かかり続けるため、家計設計の際には「60代の自分」と「70代以降の自分」でかかる金額が異なる可能性を念頭に置いておくことが大切です。

教養娯楽費・交際費――老後の生活に「ゆとり」をもたらす費目

老後の生活費の内訳を語るとき、必要最低限の費目だけに目を向けてしまいがちですが、教養娯楽費と交際費は生活の質そのものに関わる大切な支出です。

家計調査(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の教養娯楽費は月平均2万6,538円(約2万7,000円)、交際費は2万3,257円(約2万3,000円)で、合わせると毎月約5万円の支出になります。
単身世帯でも教養娯楽費が1万6,132円、交際費が1万6,956円と、合わせて月3万円を超えています。

教養娯楽費は、旅行・パック旅行代、映画や観劇などのチケット代、カルチャースクールや習い事の月謝、スポーツクラブの利用料、ガーデニング用品代などが含まれる費目です。
退職後は時間的な余裕が生まれる分、こうした趣味・娯楽への関心が高まる傾向があり、現役時代よりもむしろ充実させたいと考える方も少なくありません。
総務省の調査では、60代世帯のパック旅行費は全世代のなかで最も高い水準にあることも示されており、退職直後の比較的体力がある時期に旅行や趣味を充実させる方が多いことがうかがえます。

交際費は、子や孫へのお祝い、友人との食事代、冠婚葬祭の費用などが中心です。
現役時代の職場付き合いとは性質が変わるものの、家族や地域のつながりにかかる費用は老後も続きます。
教養娯楽費・交際費は削ろうと思えば削れる費目ではありますが、人とのつながりや生きがいを支える面もあるため、「抑えすぎない」バランス感覚が大切です。

内訳を”自分ごと”にする見方

ここまで費目別に見てきた数字は、あくまでも全国の65歳以上無職世帯の平均値です。
平均はひとつの目安にはなりますが、実際の家計は住まいの形態・家族構成・健康状態・趣味や価値観によって大きく異なります。

大切なのは、平均額と自分の家計を比べたときに「どこがずれているか」を知ることです。

たとえば、持ち家で住宅ローンを完済している方は、住居費が統計の平均に近い低い水準に収まる可能性が高い一方、賃貸暮らしの方は平均を大幅に超える住居費を見込む必要があります。
持病があって定期的に通院している方は、保健医療費が60代のうちから高めに推移することを前提に考えておくと安心です。
逆に、食費や交際費は「削ろうと思えば削れる」変動費の性格が強いため、家計が厳しくなったときの調整余地として把握しておくことが役立ちます。

内訳を自分ごとにするための実践的な一歩として、現在の家計の支出を費目ごとに書き出してみることをおすすめします。
食費・住居費・光熱費・医療費・趣味娯楽費といった区分で現状を把握しておくと、定年後の変化がどこに出やすいかを具体的にイメージしやすくなります。
老後の生活費を「総額でいくら必要か」という視点で試算する方法は、「老後の生活費はいくら必要か」の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

よくある質問

Q1. 老後の生活費の内訳で、一番お金がかかる費目はどれですか?

総務省統計局の家計調査(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯で金額が最も大きいのは食料費で、月平均約7万9,000円となっています。消費支出全体の約30%を占めており、老後においても食費は家計の中心的な費目です。ただし、賃貸住宅にお住まいの場合は住居費が食費を上回ることもあるため、世帯の状況によって順位は変わります。

Q2. 持ち家と賃貸では、老後の住居費にどのくらい差が出ますか?

家計調査の統計上、65歳以上の夫婦世帯の住居費は月平均約1万8,000円ですが、この数字は持ち家に住む世帯が大半を占める中での平均です。賃貸住宅に住んでいる場合は、地域や間取りによって月5万〜10万円以上の家賃がかかるケースも珍しくなく、老後の生活費設計に大きく影響します。持ち家と賃貸の費用の違いは、「持ち家の老後の生活費」の記事で詳しく解説しています。

Q3. 老後の保健医療費は、年齢が上がるとどのくらい増えますか?

ニッセイ基礎研究所の分析によると、65〜69歳と75〜79歳を比べると医療費はおよそ1.6倍に膨らむ傾向があります。60代のうちは月1万〜2万円台に収まる方が多いですが、70代以降は通院の頻度や薬の種類が増えるにつれて費用が上がっていくため、早めに備えておくことが大切です。

Q4. 教養娯楽費や交際費は、老後も続けてかかりますか?

はい、老後も継続してかかる費目です。2025年の家計調査では、65歳以上の夫婦世帯の教養娯楽費が月平均約2万7,000円、交際費が約2万3,000円と、合わせると毎月約5万円の支出になっています。旅行・趣味・孫へのお祝いなど、老後ならではの支出も含まれており、豊かなセカンドライフを送るうえで欠かせない費目のひとつです。

Q5. 老後の生活費の内訳は、単身世帯と夫婦世帯でどう違いますか?

消費支出の総額は夫婦世帯が月平均約26万4,000円、単身世帯が月平均約14万8,000円と大きな差がありますが、費目ごとの割合はそれほど大きく変わりません。単身世帯で注意が必要なのは、光熱費などの基本料金を一人で全額負担する点で、水道光熱費の割合は夫婦世帯の8.9%に対して単身世帯は10.5%と高めです。単身世帯の生活費の詳細は、「老後の一人暮らしの生活費」の記事でも解説していますので、ご参照ください。

まとめ

老後の生活費の内訳を費目別に見てきましたが、最も大切なのは「平均はあくまで参考値」という視点です。食費・住居費・水道光熱費・交通通信費・保健医療費・教養娯楽費・交際費——それぞれの費目が、自分の暮らし方によってどう変わるかを把握することが、現実に即した備えの第一歩になります。

特に意識しておきたいのは、住居費の持ち家・賃貸による差と、保健医療費が年齢とともに増加していく点です。この2つは金額の変動幅が大きく、家計設計に与える影響も小さくありません。一方、食費や教養娯楽費は工夫次第で調整しやすい費目でもあるため、固定費と変動費を区別して考えると、家計全体を把握しやすくなります。

費目別の内訳を把握できたら、次は「自分の場合にいくら必要か」を具体的に計算してみましょう。老後に必要な総額の考え方は、「老後の生活費はいくら必要か」の記事で詳しく解説しています。夫婦2人世帯の収支は「老後の生活費(夫婦2人)」、単身世帯の収支は「老後の一人暮らしの生活費」、老後の生活費の全体像は「老後の生活費の全体像」の記事もあわせてご覧ください。

※本記事の数値は2026年10月現在公表されている最新データ(総務省「家計調査」2025年平均など)に基づいています。統計の更新や制度改正により数値が変わる場合がありますので、最新情報は総務省統計局の公式サイトでご確認ください。

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